佐野日大は5‐4‐1の布陣が話題になっているが、同じシステムでも時間帯によってSBの攻撃参加に変化を付けるなど、守備のベースは変えない中でも攻撃の判断を選手間でコントロールする戦い方が勝利につながっている。もともとのイメージは3バックだという。昨年6月のインターハイ予選で同県の強豪・矢板中央に0‐3と惨敗した後に取り入れた時は選手から少なからず反発もあった様だが、攻撃力や個の能力に勝る相手ばかりとなる選手権の舞台で勝ち上がるために、良い意味での“割り切り感”が芽生えている。

 その中で特筆するべき存在がFWの野澤陸だ。長身で技術が高く、本人は「大迫勇也(現ケルン)選手をイメージしている」と語る様に複数のDFを背にしても粘り強くキープし、守備から攻撃に移る味方を押し上げさせている。準々決勝の前にはOBの小林成光(FC東京などで活躍)氏に上体だけでなく、臀部と太ももに力を入れてDFを押さえる技術を学んだというが、もともと中盤の選手でFWにコンバートして半年ほどという。3年生で大学への進学が決まっているが、伸びしろに期待したい存在だ。

 前橋育英は言わずと知れた高校サッカーの名門だが、大会前の優勝候補ではなかった。夏のインターハイ予選でまさかの初戦敗退を喫したことが前評判を下げた大きな要因だが、2年生がレギュラーの半数を占めるチームを名将・山田耕介監督が地に足を付けて作り上げた成果が選手権で発揮されているようだ。4‐4‐2の3ラインをコンパクトに機能させ、効率的なハイプレスと素早いパスワークを継続させる。その戦い方には準々決勝まで3試合で13得点と猛威をふるっていた滝川第二(兵庫)も沈黙した。

 興味深いのが渡邊泰基と後藤田亘輝の2年生SBコンビだ。CB顔負けの対人守備を誇り、いざマイボールになれば鋭い上がりから攻撃に迫力をもたらす。中央で高い統率力を示す松田陸、準々決勝は累積警告で出定停止となったものの、3回戦でCKから決勝点を叩き込んだ角田涼太朗の2年生バックラインは次の大会に向けても前橋育英の大きな強みになりそうだ。

 準々決勝で敗れた駒沢大高(東京A)と正智深谷(埼玉)も勝ち上がりに相応しい好チームだった。駒沢大高はパワーとテクニックを兼ね備え、積極的なシュート意識が目に付いた。佐野日大から先制点を奪ったものの、終盤に逆転されたのは“甘さ”もあったかもしれないが、1年生DF齋藤我空など楽しみなタレントも目に付いた。正智深谷は優勝候補の青森山田に“力負け”した形だが、3点取られた終盤に1点をもぎ取るなど、最後まで諦めない姿勢は選手権らしい感動をもたらした。

 大会もファイナルを残すところとなったが、ここまで冬空の下で熱い戦いを繰り広げてきたチームの頂点を目指す戦いに相応しい試合を期待したい。(文・河治良幸)

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