■脊柱管狭窄症も1時間で治す

 その一方、PEDの応用や適応拡大にも余念がない。PEDと同じ内視鏡と特別なドリルを組み合わせ、腰部脊柱管狭窄症の手術も近年は進めている。

 背骨には神経(脊髄)が通る脊柱管というトンネルがあり、骨の圧力や椎間板の突出などで脊柱管が狭くなるのが脊柱管狭窄症だ。手術では圧迫している骨などを削り、狭くなった脊柱管を広げていく。

 出沢医師はPEDで使う内視鏡の管に、1分間で8万回転する細いドリルを入れて骨を削り取っていく方法を編み出した。これは「PEL(経皮的椎弓切除術)」と呼ばれ、世界最小の侵襲手術として注目されている。こちらも傷口は小さく、手術は1時間~1時間半で終わる。患者のほとんどが数時間後には歩くことができるという。

「整形外科の疾患は命に直結するわけではないですが、QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)が大きく低下します。旅行やスポーツが趣味だった人が、寝たきりになることも少なくありません。ただし、整形外科の疾患は手術で完治するものがほとんど。負担の少ない手術法で、一人でも多くの人を治し、楽しみを増やしてあげたいです」 

 そんな出沢医師の健康法は水泳だ。もともとはジョギングが趣味でフルマラソンも6回完走しているが、11年に首が痛くなり水泳に切り替えた。

「毎夜、自宅近くのプールで1時間ほど泳いでいます。全身の筋肉がバランスよく鍛えられ、血流も良くなるので体調はずっといいですね。あとはストレッチです。朝起きたときに『波止場のポーズ』をやっています。ふくらはぎがしっかり伸び、腰痛予防にもなります。オススメです」

 そう笑顔で話す出沢医師。目標は80歳まで整形外科医を続けることだ。

出沢明PEDクリニック院長 帝京大学溝口病院客員教授 出沢明医師
1980年、千葉大学医学部卒。横浜東病院整形外科医長、帝京大学溝口病院整形外科教授、副院長補佐などを経て、2014年にPEDクリニック開業
<実績> 合計手術数 約2600例(椎間板ヘルニア1800例、腰部脊柱管狭窄症800例)

※週刊朝日MOOK「新名医の最新治療2017」