しかしリンパ管にはがん細胞の浸潤が認められ、手術が必要となり、金沢大学病院に移された。腹部に数カ所の穴を開け、腹腔鏡や鉗子を挿入する腹腔鏡下で胃とリンパ節を切除した。

 切除したリンパ節に転移はなかったが、がん細胞が漿膜まで達する進行がんであったことが、切除した胃の病理診断で明らかとなった。幸い神田さんは現在も再発はなく、元気だ。

 胃がんの手術では近年、切除後の胃機能の温存を考慮した縮小手術が行われるようになっている。

「発生部位や進行度に合わせて、術後に残る胃にできるだけ悪影響が出ない手術を行います。くわえて、高齢者や肥満の人に多い胃食道逆流症が併存する場合には、ルーワイ法など術後の障害を軽減する胃の再建を行います」(同)

 また同病院など一部の施設では、がん転移が最も起こりやすいセンチネルリンパ節への転移の有無を手術中に詳しく調べ、切除範囲を最小かつ適正にする取り組みが行われている。

 乳がんや悪性黒色腫の治療として定着しているこの手法は、胃がんにも有効と考えられている。腹腔鏡を利用した術中検査でセンチネルリンパ節への転移が陰性ならば、胃を温存して内視鏡でがんのみをとるという方法も将来的には可能となる。

「胃がんは早期ならば確実に治り、治療後も快適な生活が送れるようになっています。ピロリ菌除菌や定期的な内視鏡検査で予防、早期発見することも大切です」(同)

(文/ライター・山崎正巳)

※週刊朝日MOOK「新名医の最新治療2017」より抜粋