結果以上に内容の濃いシーズンを送った錦織圭(写真:Getty Images)
結果以上に内容の濃いシーズンを送った錦織圭(写真:Getty Images)

 ツアータイトルは250シリーズのメンフィスだけで、最終順位は自身最高位からひとつ下の5位──。錦織圭の2016年は結果だけを見れば、取り立てて喜ぶべきものではないかもしれない。しかしその内容は前年にも増して充実したものであり、さらなる飛躍への足場を固めたシーズンだったと言えるはずだ。

 ハイライトを挙げるなら、リオ五輪、全米オープン、ツアーファイナルズとなるか。

 脇腹の負傷により4回戦で途中棄権したウィンブルドンの後、復帰したロジャーズ・カップで今季2度目のマスターズ準優勝を遂げた錦織は、調子を取り戻してブラジルへ向かった。自身3度目の五輪では第4シードとして、3回戦まで1セットも失わずに突破。準々決勝では第6シードのガエル・モンフィス(フランス)にタイブレークで3度のマッチポイントを迎えられながらも、耐え凌いで死闘を制した。同じくモンフィスを相手に5度のマッチポイントを覆した、3月のマイアミ・マスターズのセミファイナルを思い出す劇的な幕切れだった。

 アンディ・マレー(イギリス)にストレートで敗れた準決勝の後、「落胆は大きい」と話したが、ラファエル・ナダル(スペイン)との3位決定戦では気持ちを切り替えて、元王者にフルセットの末に勝利。「重かった。受け取った時に色々な思いが駆け巡りました」と日本人テニス選手として96年ぶりに獲得したメダルの感想を語っている。

 大舞台は続き、直後の全米では準優勝した2014年以来2度目の準々決勝に進出。そこで現在の世界1位(当時は2位)のマレーをフルセットの末に破り、再びのファイナル到達も期待されたが、準決勝でスタン・ワウリンカ(スイス)に屈した。

 次の楽天ジャパン・オープンでは2回戦で臀部の怪我によりリタイアしたが、それまでの好成績から3度目のツアーファイナルズの出場権を獲得。11月のロンドンでは、今季後半戦に快進撃を続ける王者マレーとラウンドロビンで今年4度目の対戦を迎えた。全米で勝利したとはいえ、相手は勢いに乗るナンバーワン選手だ。開始から張り詰めた接戦が続き、最初のセットは錦織がモノにしたものの、続く2セットを連取されて敗北した。

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