また、主戦のクリストフ・ルメール騎手は、戸崎圭太騎手を1勝リード(12月23日時点)して、し烈な最多勝争いを展開中。本年最終日の有馬記念に勝って自身初のリーディングを確定させる可能性もあり、モチベーションは非常に高い。ルメール騎手といえば、ハーツクライを駆って武豊騎手のディープインパクトを完封した有馬記念(2005年)の記憶が鮮烈。当時は意表を突く先行策で大本命を撃破したが、今回はキタサンブラックの後ろからマークする展開が濃厚で、交錯する人馬の関係も非常に興味深い。

 ディフェンディングチャンピオンのゴールドアクターはファン投票3位に甘んじた。昨年は逃げるキタサンブラックを3番手追走からねじ伏せたが、今季は天皇賞・春、前走のJCで連敗と分が悪い。ただ、天皇賞では内枠有利の馬場状態で終始外を走らされる不利に泣き、JCも有馬記念より10キロ重い自己最高の体重が影響した。中山競馬場に限れば有馬記念から日経賞、オールカマーと負け知らずで来ているうえ、今回は枠順もキタサンブラックの隣の1枠2番と恵まれた。あとは中間の調整でダイエットに成功するか。

 JCでキタサンブラックに続いたサウンズオブアースは、昨年の有馬記念でも2着。大レースでたびたび上位争いを演じてきた一方、通算2勝止まりの勝ち切れないキャラクターが泣き所で、ファン投票も9位と伸び悩んだ。ただし、ミルコ・デムーロ騎手は2010年の優勝をはじめ、有馬記念では過去10年で入着3回の好成績。皐月賞は単独最多の4勝を誇り、今秋もスプリンターズSを制すなど、中山競馬場の大レースでは滅法勝負強い。サトノダイヤモンドが加わった以外、実績上位馬の顔ぶれは昨年と大差ないだけに、人気以上の結果を残しても何ら不思議はない。

 ファン投票4位のダービー馬マカヒキは出走回避。5位には牝馬のマリアライトがランクインした。キタサンブラックとの力関係は昨年の有馬記念でアタマ差及ばず4着、半年前の宝塚記念では際どく差し切って優勝と互角。宝塚記念後の2戦では勝ち星に見放されているが、前々走は休み明け、前走は序盤に大きな不利を受けた。今季、キタサンブラックが先着を許した馬で、有馬記念に出走するのはマリアライトしかおらず、近走の結果だけで見限れない。

 シュヴァルグラン(ファン投票10位)は元メジャーリーガーの大魔神こと佐々木主浩さんの所有馬。北島三郎さんとのセレブ馬主対決が年の瀬の大一番に華を添える。キタサンブラックには3連敗中だが、天皇賞・春とJCは積極性に欠ける消化不良のレース内容。姉ヴィルシーナと妹ヴィブロスがG1を勝っており、大舞台で格負けするような器ではないはずだ。今月3日に右鎖骨を骨折したばかりの福永祐一騎手が、復帰を急いだのも勝算あっての判断と解釈できる。オーナー譲りの豪快なプレーで勝機を見出したい。(文・渡部浩明)