また、小林、井手口にしてもMFではあるが、持ち味は攻撃力。左利きで技術が高い小林は、前線で多彩なアイディアを駆使して攻撃を組み立てる。井手口は中盤でのボール奪取能力も高いが、ボール奪取の勢いを攻撃の推進力につなげられる選手であり、まさにハリルホジッチ監督好みのボランチ。今回が初招集の井手口はもちろんのこと、小林も日本代表経験はごくわずかしかないだけに、この機会にぜひ試してみたい選手だ。

 とはいえ、その一方で、現在の日本代表は親善試合だからと言って、単純に新戦力発掘の場に使えない事情を抱えている。

 というのも、前述したように海外組の多くが所属クラブで出番を失っており、実戦から遠ざかってしまっているのである。

 日常的に試合に出ている選手については、ハリルホジッチ監督も常にその選手の調子やコンディションを把握できる。ところが、試合に出ていないとなると、チェックのしようがない。その結果、日本代表に招集した際に出場機会を与え、試合勘を取り戻させると同時に、選手の状態を確認するしかなくなってしまうのだ。

 象徴的なのが、本田圭佑だ。ハリルホジッチ監督は「本田以上の選手はいない」と言い、彼を絶対的な存在としてチームの中心に据えているが、所属先のミラン(イタリア)ではまったくと言っていいほど出場機会がない状態が続いている。

 こうなると、実質的に実戦の舞台が日本代表にしかない本田を外すのは難しく、むしろ優先的に出場機会を与えなければならない。本田ほどではないにせよ、DFラインの中心を担う吉田麻也(サウザンプトン/イングランド)にも同じことが言える。それが結果として、新戦力の起用、ひいては世代交代が進まない一因にもなっている。

 本来であれば、日本代表での経験が豊富で、すでに絶対的な地位を築いている彼らは、日常のリーグ戦の疲れを取りつつ代表戦を迎えるという流れが理想なのだが、むしろ若手の出場機会を奪う結果になっているのだから、厄介な話だ。

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