そんな浅田がSP、フリーともにバレエ音楽『恋は魔術師』の『リチュアル・ダンス』で演じるという意欲的な試みをする今季。シーズン初戦に選んだのは10月6日からのフィンランディア杯だった。だが帰国後に佐藤信夫コーチが左膝痛を抱えていたことを明らかにしたように、しっかり練習が積めていない状態だったために、「まだ確率が悪いから」とトリプルアクセルを回避する構成にした。それもあってダブルアクセル以外のジャンプはミスも出て、SP64.87点でフリーは121.29点。合計186.16点でケイトリン・オズモンド(カナダ)に次ぐ2位という結果に終わった。

 だがジャンプ以外のスケーティングやスピンには余裕と重厚さもあり、特にフリーの最後に行うステップシークエンスは、これまで以上の気迫や強さ、凄味を感じさせるもの。26歳になった彼女だからこそ出来る演技を見せており、期待感を高めてくれた。

 フィンランディア杯のあとは振付師のローリー・ニコルの本拠地であるカナダで練習を積み、振り付けも多少の変更を加える予定だという浅田。16年世界選手権2位のワグナーや4位のグレイシー・ゴールド(アメリカ)と戦う現地時間10月21日開幕のGPシリーズ初戦、スケートアメリカで、どんな演技を見せてくれるか期待したい。(文・折山淑美)