――ワイヤーからですか。それはすごいですね。

 これまで値段が高くて普及していなかった種類の製品を、自社生産することで安く世の中に提供し、誰もが使える商品にしていく。それはニトリのポリシーでもあります。

 こうした価格破壊を目指す新商品を開発するときは、最初から量産することが前提です。しかし、コストを下げるための大量生産や大量購入は、店舗数が増えてきたから可能になったことです。店が少なかったときには、苦労しました。

「何年かして店の数が増えたら、利益が出るようになるはず。それまでは我慢しよう」と考え、安い値段で販売を続けました。そういう制限がなくなったのは、100店を超えてからです。200店になるとさらに購買力がアップし、400店に達した今は、一段とすごいパワーになってきました。

――ニトリが成功した理由は何だと思いますか?

 工場の赤字がかさんでも、輸入品のトラブルが続いても、あきらめずに続けているうちに、それが海外生産に発展して、ニトリの商品の中核を担うようになり、世界に類例のないビジネスモデルができあがった。これもあきらめずに工夫し続けた、執念のおかげです。

 なんでも自分たちでやろうとするのは、表面的な利益率以上に、自社でやることで社員が技術を身につけて、スペシャリストになっていくというメリットがあるからです。人が育つのです。「企業は人なり」です。人が育てば、事業は狙い通りに成長していくものです。お店の作り方、組織の作り方ももちろん大切ですが、それより人の育て方のほうがもっと大事なのです。

 教育の成果は、最低10年はしないと出てきません。10年でやっと改善の提案ができるようになり、20年でやっと、改革やコーディネートが提案できるようになるのです。