【早産・低体重児出産】


 歯周病は、出産に悪影響を与えることもわかってきました。1996年に初めて「早産の危険因子の一つ」という研究報告が発表されて以降、各国でおこなわれてきた多くの研究を解析した結果、重い歯周病にかかった女性は早産や低体重児を産むリスクが、かかっていない人の3.57倍になることが示されたのです。

 早産や低体重児出産のリスクとして喫煙や高齢妊娠がよく知られていますが、細菌性膣炎などの細菌感染もリスクの一つ。歯周病も感染症なので、歯周病にかかった歯周組織が作り出す炎症物質が血液中に入り込み、子宮頸管を柔らかくし子宮を収縮させて早産しやすくさせると考えられています。また、歯周ポケットから血液中に入り込んだ歯周病菌の毒素が子宮などに流れ着き、直接悪さをしている可能性もあります。ただし、歯周病を治療すると早産や低体重児出産のリスクを減らすことができるかどうかは意見が分かれており、まだ明らかな結果が出ていません。

 なお、妊娠中はつわりで食事が不規則になったりブラッシングが不十分になったりする上に、胎盤で作られるホルモンの影響で歯周病菌が増殖するため、歯周病が悪化しやすくなります。妊娠する前に歯周病をしっかり治しておきましょう。

【その他】
 そのほかにも、歯周病が肥満に関連している、腎臓病を悪化させる、HIVに感染した後AIDS(エイズ)の発症を早めるといった報告があります。ただし、まだしっかりと因果関係が証明されていません。

■歯周病の治療とともに全身の健康管理を

 歯周病は多くの全身病と関連しています。すなわち歯周病を治せば、他の病気も良くなりますし、持病を治療して改善すれば歯周病にも好ましい影響を与えます。どちらか一方の治療ではなく一気に両方治療すると、抜群の治療効果が期待できるということです。

 歯科を受診したら、糖尿病など持病があることを歯科医師に伝えてください。歯科医師は、持病でかかっている医師と連携を取りながら治療を進めていきます。