飾り切りで表現した水辺の生き物たち。ここまでくるともはや芸術(日本ハム提供)
飾り切りで表現した水辺の生き物たち。ここまでくるともはや芸術(日本ハム提供)
子どもが好きな車や飛行機も、ウインナで表現できる(日本ハム提供)
子どもが好きな車や飛行機も、ウインナで表現できる(日本ハム提供)
ちょっと工夫するだけで、かわいいハートが完成する(日本ハム提供)
ちょっと工夫するだけで、かわいいハートが完成する(日本ハム提供)
イベントなどでのリクエストが多いというライオン(日本ハム提供)
イベントなどでのリクエストが多いというライオン(日本ハム提供)
飾り切り教室には、子どもから大人まで多くの人が訪れる(日本ハム提供)
飾り切り教室には、子どもから大人まで多くの人が訪れる(日本ハム提供)

 お弁当に花を添える「タコさんウインナ」。言わずと知れた、ウインナの端っこに切り込みを入れて作るアレだが、比較的簡単にできるため、お弁当や朝食作りに頭を悩ませる保護者にとって、昔も今も心強い味方だ。しかし、時を経て、ウインナの飾り切りは驚くべき進化を遂げている。

【ウインナ飾り切り 匠の技ギャラリーはこちら】

 タコさんウインナを考案したのは、NHK「きょうの料理」の講師も務めた料理研究家の尚道子さん。ウインナが日本の家庭に入ってきた昭和30年代、はしを使って食べやすいようにと切り込みを入れることを考え付いたのが始まりだという。

 大手食品メーカーで、自社サイトでウインナなどの「飾り切り広場」を展開する日本ハム(本社・大阪市)によると、洋食が日本の家庭に押し寄せ、第2次ベビーブームでもあった昭和40年代になると、母親たちは子どもが喜ぶようにと、お弁当作りに励むようになった。その中で、タコさんに代表されるウインナの飾り切りも広まっていったのだという。

 今やキャラ弁やキャラご飯と、味だけでなく見た目の可愛らしさにもこだわる時代。飾り切りも存在感を増し、ウインナだけでなくハムも使われるようになった。同社が販売促進活動の一つとして、店頭での飾り切りパフォーマンスを始めたのは1965年のこと。子どもたちへの食育を推進する食育基本法が制定された2005年ごろからは、幼稚園や小学校、自治体などから依頼され、飾り切り教室を開くようになった。現在は、全国で年間100件程度の飾り切り教室を開催している。

 そんな同社の「飾り切り広場」では、全国に約50人いる「飾り切り職人」の知恵と技が結集した作品の数々が「飾り切りギャラリー」として掲載されている。

 例えば、海や池のジオラマに、魚やアヒル、ペンギンなどを配置した「水の仲間たち」。涼しげでこれからの季節にぴったりなうえ、食べるのがもったいなくなってしまいそうだ。スイカの皮をくりぬいたトンネルから出てくる列車や道路を走る車などが見事な「乗り物GOGO」も子どもが喜びそう。他にも、薄く切ったウインナをうろこに見立て、ひたすら重ねて形づくった魚や、飾り切りで作った花を工夫して配置した博覧会など、もはやお弁当やご飯の枠を超え、芸術作品となっている。

 これらの作品は全国の飾り切り職人からアイデアを募集し、職人の中でも“匠の技”を持つ3人が制作を担当する。同社によると、サイトを見た人からは「ひと手間でこんなに変化するなんて」「驚きを隠せない」「お弁当ですぐにでも挑戦します」といった反応が寄せられるそうだ。

「初めてお客さまの前で飾り切りを披露する時は手も震え、説明もままならない状況でした」

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