イングランドのロイ・ホジソン監督は4月にセックス禁止令を出し、面会はオフのたった1日、午後だけとしていたが、5月になってこれを撤回。心変わりの理由は「あまりにも日常とかけ離れた環境は良くない」からだそうだ。

 セックスがアスリートのパフォーマンスに及ぼす影響については、紀元前まで話がさかのぼる。古代ギリシャの戦士は、力の源が精液の中にあると考えており、戦争や競技の前は禁欲生活を送ったと言われている。この“神話”の普及に一役買ったのが、ボクサーのモハメド・アリだ。彼は、射精と同時に男性ホルモンのテストステロンが放出されることで闘争心も減少すると考え、試合の6週間前からセックスを止めていた。このエピソードに影響を受けた指導者は多い。

 しかし、研究者によればこの考えは“都市伝説”のようだ。セックスと競技パフォーマンスの関係を研究している男性病学・性医学者のエマニュエレ・A・ジャンニーニ氏は、性交渉のあとにこそテストステロンの分泌量はアップするとし「3カ月性交渉がない場合、テストステロンの量は子どものそれに近いレベルまで落ちます」と説明する。また、カナダの家庭医療の第一人者であるイアン・シュライアー博士は「ビッグイベントの前、選手の緊張と不安があまりに大きいようなら、セックスがいい気晴らしになる」と、むしろ性交渉はプラスに働くと指摘する。

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