「産休・育休後の復帰プログラムも整備されつつありますが、看護師の日ごろの業務には、妊婦にとっては負担の大きい内容の仕事もあります。生涯にわたるキャリアパスの設計は、看護職全体の課題です」(児玉准教授)

 出産後、復帰しても育児があるため、以前と同様の勤務をこなすことは難しく、多くの女性看護師が家庭との両立に苦心しているようだ。

 とはいえ、看護師不足が続く現状では、子育てが一段落して働こうとした際も、雇用に困ることはまずない。パートでもある程度の収入を得られるというメリットもある。看護師は、貴重な職業といえるだろう。

 実際の産休・育休や転職事情についてはどうなのだろうか?

 看護師にとって、転職は珍しくない。入職後5~7年目に、キャリアを考え、転職する人が多いようだ。30代の8割は転職経験者で、2回以上の転職経験者も半数にのぼる。

 結婚や出産などのライフイベントも、転職のきっかけになる。現場の看護師たちの8割が育休や産休を取らず、退職している。

「産休や育休で欠員が出ても補充がない。残りの人が仕事を負担するので、希望を出しづらい」(40歳・既婚)と、現場の声は切実だ。一方、「看護師ならどこでもやっていける」(33歳・女性)との声もあるように、再就職先には困らないという実状もある。

 育休や復職を応援する職場は、もちろん増えてはいる。

「産休や育休の取得の奨励はもちろん、専門看護師・認定看護師といったキャリア構築へのサポートなど、看護師が生涯を通じて安定して働ける環境づくりは、これからの大きな課題です」(児玉准教授)

(文/仁井田航、調査/看護師転職サイト「看護のお仕事」

※週刊朝日ムック『看護師になる2016』より