「医者と患者は対等のパートナー」と上野さんはいう(※イメージ写真)
「医者と患者は対等のパートナー」と上野さんはいう(※イメージ写真)

「今、病院のなかでは“患者格差”が生まれています」

 そう警鐘を鳴らすのは、全米No.1といわれる、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの医師、上野直人さんだ。がん治療の先端を担う医師として、広く知られている。その上野さんが、4月上旬に出版した『一流患者と三流患者』(朝日新書)では、「患者さんの“差”が、受けられる治療やその後の健康に大きく関連するようになってきているのです」と書かれている。

 医療格差じゃなくて“患者格差”――?

 そう疑問に思うことだろう。がんなど大きな病気にかかったら、「どこの病院に行くか、どの医者に診てもらうかが大事なのでは」と。

「どんなに情報を集めて、病院ランキング上位の病院に行ったとしても、名医を探してみたとしても、安心はできません。ブランド病院であることや、名医であることが、あなたにとって最適な治療を保証するものではないからです」(上野さん)

 ……どうやら病院や医者の良し悪しではなく、病気になると患者の「スキル格差」によって、選び取れる治療が変わってしまうという。なぜなら医療技術の進歩によって、年々新しい治療法や薬がどんどん生まれていて、患者が選び取れる選択肢はどんどん増えているからだ。医療側も忙しくて、内情は新しい知識に追いつこうと青息吐息。だからこそ、「お医者さんにお任せ」というスタンスでは危険、というわけだ。

■日本人の9割は、二流患者?

 上野さんは、本のなかで“患者格差”を以下3つに大別している。

【一流患者】
・医者のいうことを鵜呑みにしない。質問を繰り返して、ベストな治療を選択する
・情報に振り回されず、自分でも調べる習慣がある

【二流患者】
・医者に質問をしない。「はい、分かりました」「それでお願いします」が口癖
・医者のいっていることを理解はするが、自分で調べたり自ら選択をしない

【三流患者】
・自分の病気や医者のいっていることを理解しない。理解しようとしない
・病院や医者に文句ばかりいう。病院や医者を「悪者」と決めつけている

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