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消滅可能性都市・三浦市が挑む定住促進策「トライアルステイ」

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トライアルステイに使われた家の1つ。古い趣が参加者に人気だった。

トライアルステイに使われた家の1つ。古い趣が参加者に人気だった。

広大なキャベツ畑。「海のマグロ、陸の大根」と言われる三浦大根に並ぶ名産品だ。

広大なキャベツ畑。「海のマグロ、陸の大根」と言われる三浦大根に並ぶ名産品だ。

4月から2拠点移住を決めた杉本篤彦さん。住む家は友人たちも週末暮らすセミクローズドシェアハウスにする予定。

4月から2拠点移住を決めた杉本篤彦さん。住む家は友人たちも週末暮らすセミクローズドシェアハウスにする予定。

安原芳宜さんと妻の正美さん。ものづくり職人やクリエイターたち、また新規移住者の頼れる相談役だ。

安原芳宜さんと妻の正美さん。ものづくり職人やクリエイターたち、また新規移住者の頼れる相談役だ。

三崎港バス停前にあるこの入り母屋造りの酒屋は現在、ゲストハウスとしても活用されているという。

三崎港バス停前にあるこの入り母屋造りの酒屋は現在、ゲストハウスとしても活用されているという。

 見渡す限りのキャベツ畑の向こうに広がる青い海、そこにはヨットが多数帆を上げている。そこから少し南の港町では朝市に人が群がり、マグロ料理を出す店には行列ができている……。

 神奈川県三浦市。年間530万人を超える観光客が訪れ、週末の三崎港周辺は大変な賑わいとなる。ところが三浦市は神奈川県の市部では唯一「消滅可能性都市」と名指しされ(有識者団体『日本創成会議』による)、人口減少に悩んでいる市でもあるのだ。

 そんな三浦市が平成27年度に新たにある定住促進事業を行った。定住希望者に空家を提供し、2週間三浦市に住んでもらいながら定住のイメージを持ってもらう“トライアルステイ”、つまりお試し移住である。神奈川県の「地方創成大学連携事業」の1つとして、三浦市、東洋大学、そしてユニークな視点で不動産を紹介する東京R不動産の三者が連携し行ったものだ。

 トライアルステイは市民から空家を7軒提供してもらい、そこに昨年11月から21組の定住希望者に2週間住んでもらう形で実施。人口減少と並んで空家率の高さも三浦市の抱える問題の1つだが(空家率17.4%で県内トップ)、他地域で悩みの種となっているような倒壊寸前の空家ではなく、高齢化や若者の流出で、傷みの少ない空家がほとんどだったことは三浦市にとって幸いだった。どの物件を貸してもらうか実物を見にいった際、市の方では「これは古すぎるかも?」と危惧した物件は、実は移住希望者には好評だったという。

「いわゆる古民家のような作りの方が人気が高かったですね。バスで市内を案内したときも、広いキャベツ畑の中を走るとき『すみません、この辺は風景に変化がなくて』と言ったら『いや、こういう景観こそが素晴らしい』と言われて三浦への移住を考える方が求めているものはこういうことか、と実感しました」と言うのは、この事業の担当として奔走した三浦市政策部市長室・室長 徳江卓さんだ。事前に応募者から取ったアンケートからもそれは伺える。「三浦市での生活に期待すること」という設問に「豊かな自然」と応えた人は98.7%にものぼる。

 トライアルステイに応募する人は単身でも家族でもカップルでもOKで、申し込みは76組に達した。多くは東京や横浜の都市部からだったが、青森やなんとイギリスからも応募があったという。市ではうち20〜40代の夫婦や単身者21組にトライアルステイを体験してもらった。

「感想はおおむね好評でした。都内から思っていたよりも近く感じられたとか、都市部で勤務した後に帰ってくると環境の違いでオンとオフのメリハリが付くなどの意見が寄せられました」(徳江さん)。

 では定住にどれだけ結びついたかというと、現時点では4月から都内との2拠点移住という形を選んだ男性が1名。そのほかに2家族が検討中という。

 この3組には共通項があった。トライアルステイの最中に、地元の人々とのつながりをしっかり作ったことだ。たとえば26歳の杉本篤彦さん。コワーキングスペースを運営する会社の経営者で、4月から週末は三浦に住む予定だ。


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