このように考えると、為替取引においては、上昇局面にあるように見えても、相対する通貨においては下落局面と言うことになります。この点を理解しておけば、ユーロなどのクロス取引の仕組みが分かりやすくなります。

 余談ながら、ユーロが誕生する前では、欧州各国の通貨が取引されていました。ドイツマルク(DEM)、イタリアリラ(ITL)、オランダギルダー(NLG)など。

さて、ここで問題です。オランダギルダーとイタリアリラを取引する場合には、市場ではどちらの組み合わせが基準になるのでしょうか? NLGITL?それともITLNLG? 

 為替取引において、通貨表記には一定のルールがあります。

 まずはユーロ。2番目には英国連邦系の通貨(イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、南ア、香港)になります。その後が、スイスフランとなり、日本円はほぼ決まって右側通貨表記となっています。これは為替取引市場で長年築かれたルールなのです。(例外として、両替商などでは自国の通貨を前に持ってくるなど便宜上反対表記する場合もあります)

 では、先ほどのオランドとイタリアの場合はどうでしょうか? 今ではユーロに統一されていますが、欧州域内では、国力、GDPそして大事なポイントは流動性という点で評価されます。ユーロの前身で見れば、筆頭はドイツ・マルク、二番手にオランダ・ギルダー、三番手はベルギー・フランとなります。その他にもさまざまな通貨がありますが、歴史上において安定性があり影響力がある通貨が左側表記になりますよって、先ほどの答えは NLGITLとなります。

 通貨表記にも、歴史背景があるということです。(FXストラテジスト 宗人)