第4戦では1回裏、1死満塁の場面で松田宣浩がレフト前ヒットを放つと、三塁走者に続いて二塁走者の明石健志も躊躇なくホームへ生還したが、これは左翼手・マートンの緩慢な動きと弱肩を見切った走塁である。本当に少しの躊躇もなく、明石はホームへ突っ走った。

 マートン以外でもこの第4戦は、阪神守備陣のミスがいたるところで見られた。1回裏は無死二塁の場面で2番明石が投手前にバント、これを岩田稔が一塁を指さす捕手・藤井彰人を無視して三塁に投げると、これが野選になって無死一、三塁とピンチは拡大する。

 2対2のままもつれ込んだ延長10回裏には1死一塁の場面で本多雄一のバントを捕手・藤井が二塁に投げてこれも野選。結果的に中村晃のサヨナラ3ランにつながってしまった。

 日本シリーズの勝敗を分けると言われる外国人打者の成績はどうだろう。初戦を6対2で快勝した阪神は、ゴメスが4打数2安打3打点、マートンが4打数2安打2打点と大当たりし、今シリーズの前途に光明を見いだしたが、第2戦以降、2人のバットから快音は聞かれなくなり、シリーズ通算打率はゴメス.176、マートン.235と低調だった。

 阪神が西武相手に初めて日本シリーズを制した85年のシリーズでは、バースが打率.368、本塁打3、打点9と打ちまくり、90年に負けなしの4連勝で巨人を下した西武は、デストラーデが打率.375、本塁打2、打点8の大活躍でバース同様、シリーズMVPに輝いた。84年の阪急は対照的に三冠王を獲得したブーマーが打率.214と低調で、広島に3勝4敗で敗れる原因になった。

 短期決戦では、勝敗のカギを握る外国人打者に徹底的な弱点攻撃が行われる。ゴメスなら縦の変化球による攻めで、とくに目立ったのが、攝津正によるカーブ攻撃。第2打席では投球と同時に打席の前へ向かって歩き、前さばきで対応しようとしたが空振りの三振に倒れている。まさに象徴的な場面と言っていいだろう。
 数字的にはソフトバンクが4勝1敗と圧勝したが、紙一重の戦いが続いた。

■第1戦 阪神6-2ソフトバンク
■第2戦 ソフトバンク2-1阪神
■第3戦 ソフトバンク5-1阪神
■第4戦 ソフトバンク5-2阪神(延長10回)
■第5戦 ソフトバンク1-0阪神

 勝敗を分けたのは守りと外国人打者への攻めと言っていいだろう。

 さらに穿ったことを言えば、初戦で阪神の両外国人に気前よく打たせたことも、ソフトバンクの勝因に挙げられるかもしれない。元ヤクルトの古田敦也捕手はシーズン前半で、データの少ない打者に対して打たれるのを覚悟で甘いコースに構えた。そうやって打てるコースと打てないコースを確認し、シーズン終盤の勝負どころで厳しいコースをついて凡打に打ち取ったという。初戦でゴメス、マートンが打ちまくったとき、阪神ベンチはもう少し懐疑的になるべきだったのかもしれない。

(スポーツライター・小関順二)