■不調があれば出社を控える。職場の相互理解を深めよう

――インフルエンザの場合、ビジネスパーソンとして押さえておくべきことなんでしょうか?

 インフルエンザは発症後早期であれば薬物治療(抗インフルエンザ薬)が検討されます。薬によって発熱の期間を短くすることができますが、健康な人であれば薬を使わなくても、安静に過ごすことで、数日で症状がなくなります。ただし、熱が下がったからといって、ウイルスの排出が治った、つまり周囲への感染の可能性がなくなった、というわけではありません。

 インフルエンザもコロナと同様、周囲に感染させないことを念頭に置いて行動しなければなりません。熱が下がっても、症状が消えても、すぐに出社することはやめてください。子どもの場合、学校保健安全法によって、インフルエンザの出席停止期間を「解熱後2日を経過するまで(幼児の場合は3日を経過するまで)」かつ「発症した後5日を経過するまで」とされています。大人の場合、このような規則はありませんが、学校保健安全法に準じて、出社すべきではありません。

――コロナだけでなくインフルエンザ対策も、シーズンが終わるまできっちり行いたいと思います。

 そのためには、前述のように、マスク着用、徹底した手洗い、「3密」を避ける。これに尽きます。再三言われているように、マスクを外しての会話、宴会などは、しばらくは我慢しましょう。「2人での食事ならOKじゃないか」「アクリル板がある店なら感染リスクを下げられるのでは」「15分未満なら問題ないだろう」などと言う人もいますが、人数が少なくても、アクリル板があっても、会話の時間が短くても、感染するリスクはあります。インフルエンザ対策、そしてコロナ対策のために、会食はお勧めできません。

 マスクに関しては、医療用のN95、不織布、布、ウレタンのマスク、マウスシールドなど種類がいろいろとあります。マウスシールドやウレタンマスクは有効性が低く、避けてほしいですが、自分の飛沫を飛び散らないようにするという意味では、不織布でも布マスクでもどちらでも構わないと考えています。ただし、マスクから鼻だけ出ている、マスクを顎に引っ掛けている、という付け方は、マスクの役割を果たせていないので、鼻と口をきちんと覆うようにしてください。

――読者に向けてのメッセージをお願いします。

 コロナ対策がインフルエンザ対策につながります。まずは、コロナ対策をきちんとする。発熱や呼吸器症状が出た場合は、落ち着いて、しかるべき相談窓口に電話をする。

 多少の不調があっても出社する、という考えはどうぞ捨ててください。風邪のような軽い症状であっても、不調があれば会社を休んでください。管理者側も、休むことを想定した人員配置を心がけてほしい。コロナを、職場の相互理解を深めるきっかけにしてほしいと考えています。

(監修/虎の門病院臨床感染症科医師 荒岡秀樹)