コロナの検査に労力が割かれたためにインフルエンザの検査数が減少し、それゆえにインフルエンザ患者数が減ったのではないかという指摘もありましたが、南半球の温帯地方4カ国(オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、チリ)において、アルゼンチン以外では検査数が極端に少なかったわけではなく、実際に患者数が激減したといえます。

 その理由として、コロナ対策がインフルエンザ対策に有効に働いたこと、さらにはこれら4カ国では、コロナに対するロックダウンが国全体あるいは大都市において行われており、学校の休校措置も取られていたために子どもへの感染が抑えられ、それもインフルエンザ流行の減少につながった要因の一つではないかといわれています。

――コロナ対策が、インフルエンザ対策にもなる。

 コロナもインフルエンザもウイルス感染で発症する病気であり、飛沫感染と接触感染を避けることが、感染対策になります。マスクの着用、手洗いの徹底、「3密」を避けるというコロナ対策が、インフルエンザ対策にも大いに役立ったことは確かです。

 もう一つ、コロナを通じて、インフルエンザのワクチンの重要性を認識した人が増えたことも大きいでしょう。インフルエンザのワクチン接種者が例年よりも多いという話もあります。虎の門病院においては、インフルエンザワクチンの接種者が爆発的に増えたわけではないものの、接種するタイミングが例年よりも早かった。それも、インフルエンザの流行を抑えていると考えています。

■コロナとインフル症状の違いは?

――インフルエンザ症状とコロナの症状は共通点も多いです。

 インフルエンザ、コロナどちらも、発熱、せきや喉の痛み、鼻水といった呼吸器症状がメインにみられ、大きな違いはありません。それぞれの違いといえば、インフルエンザは症状が出始めてからピークに至るまで1~3日と比較的進行が早く、一方コロナは、重症例を除けば風邪のような症状がダラダラ続く点が挙げられるでしょう。

 また、コロナはよく知られるように、味覚症状や嗅覚症状が出てくるケースがあります。ただし、この2つの症状は、他のウイルス感染でも起こることがあります。インフルエンザでみられる関節痛や寒気は、コロナでもみられることがあります。

 いずれにしろ、症状だけでインフルエンザとコロナを見分けることは、一般の人はもちろん、医師でも難しいといえます。

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症状が出たら注意すべき「3つのファクター」