「人口予測ほど当たり易いものはない。今、20歳の人を数えれば20年後の40歳の人の数はほぼ正確に推計できる。戦争や大事件で大量死亡が出るか、多数の移民が押しかけて急増するかしない限り、20年間の死亡率は安定しているので、今年の20歳の人口から20年後の40歳の人口はほぼ正確に推定できる」とよくいわれている。

 ところが、現実には人口推計はあまり当たらない。人口推計が必要なのは20年以上の長期予測だが、それが難しい。

 例えば日本の人口、厚生省人口問題研究所(現厚生労働省社会政策・人口問題研究所)が1969年8月に出した全国将来推計によると、2015年の人口は1億3103万人(予想低位置)から1億4647万人(同高位置)の間とされていた。これに対して2012年に発表された人口調査では、15年の人口は1億2660万人、35年前の予想の最小値をも大幅に下回っている。この違いは専ら出生数の違いだから若年層の数は大違いだ。

 たった35年間でもこれだから、さらに長期となると狂いは大きい。

 例えば2050年の日本の人口、1975(昭和50年)2月の推計では、中間値で1億4482万人、つまりほぼ一貫して日本の人口は増え続ける、と予想しているわけである。

 ところが、最近の推計では2050年の予測値は9708万人、2016年をピークに減り出している。何と1975年の推計とは5割近い差である。

 「人口推計は当たり易い」わけではない。50年単位でさえ大間違いをしているのである。

 これは日本だけではない。国際連合人口局でも地球人口の推計で大間違いをしている。これは恐らく人間心理と倫理観が出生率に大きな影響を与えることを無視しているか、心理や倫理の変化に無頓着なせいだろう。

(週刊朝日2015年1月16日号「堺屋太一が見た戦後ニッポン70年」連載24に連動)