<コラム>桑田佳祐がなおもエネルギッシュで在り続ける理由とは―。“紅白の名場面”と『レッツゴーボウリング』からその秘密に迫る
<コラム>桑田佳祐がなおもエネルギッシュで在り続ける理由とは―。“紅白の名場面”と『レッツゴーボウリング』からその秘密に迫る

 既報の通り、去る1月1日にリリースされた桑田佳祐 & The Pin Boys『レッツゴーボウリング』が、最新のBillboard JAPAN Top Singles Sales(2018年12月31日~2019年1月6日までの集計)で、週間シングル・セールスチャート首位を獲得した。昨年の大晦日、サザンオールスターズとして出場した第69回NHK紅白歌合戦における歌手別最高視聴率45.3%マークという勢いを、翌日リリースのソロ作品でも十二分に見せつける結果となった。

 それにしても紅白のサザンは破格だった。「希望の轍」からの「勝手にシンドバッド」というキラーチューン2連発というテッパンのセットリスト。しかも「勝手に~」では、出場歌手がこぞって参加する中、桑田から企画コーナー枠で久々に紅白へ帰還した北島三郎に向けて「ありがとう、サブちゃーん」というストレートな言葉で敬意が表され、さらには松任谷由実が桑田の右頬にキスをして(何て粋なサプライズ!)、そのまま「ラーラーラーラララ」のくだりに乗せて互いの名前を歌い合うという、夢の“お祭り騒ぎ”が繰り広げられたのだ。

 桑田の“歌謡曲愛”は広く知られている。Act Against AIDS活動の一環として桑田が一人で流行歌のカバーを歌いまくる「ひとり紅白歌合戦」は昨年開催された第三回をもって完結したが、そこで桑田は北島の代表曲「与作」を歌い、ユーミンの「真夏の夜の夢」から「ひこうき雲」というメドレーも披露していた。また、桑田とユーミンの交流にはさらに下地があった。錚々たる顔ぶれが出演して1986、87年に放送された、伝説の音楽特番「Merry X'mas Show」(日本テレビ系)である。二人はこの番組で共演し、テーマソング「Kissin' Christmas (クリスマスだからじゃない)」を共作していたのである。

 平成最後の紅白。そのクライマックスに、思えばあんな奇跡の名場面が成立する役者(=アーティスト)もそうは他に思い浮かばない。俗に“国民的バンド”という形容でよく語られるが、あの紅白はまさしくサザンというバンドが築いたスタンスの独自性と、桑田佳祐というアーティストが持つキャラクターと音楽観の特異性が、あらためて浮き彫りとなった一幕でもあったのだ。

 で、年が明けたら、一転、“ボウリング”である。ボウリングもかつては“国民的”なブームを巻き起こしたスポーツだが、紅白からボウリングというこのシュールなギャップと振り幅もまた桑田ならではの面白さだと言えよう。

 父親の影響で中学三年生の頃からボウリングにハマり、一時はプロを目指していたという桑田のボウリング熱は、数年前、還暦のお祝いにレジェンドボウラー・矢島純一からボウルが送られたことを機に再燃した。以来、ボウリング場に通い詰めると腕前もメキメキと上がり、近年は自己最高スコア299を叩き出している。2017年には「Sports Graphic Number PLUS」(文藝春秋刊)のボウリング特集号で編集長を務め、昨2018年は「KUWATA CUP 2019」(※来たる2月10日に決勝大会)のホストも買って出た。『レッツゴーボウリング』リリース直後の1月3日には「桑田佳祐のレッツゴーボウリング 日米オールスター頂上決戦!」(テレビ東京系)なる特番も放送された。

 『レッツゴーボウリング』は日本ボウリング競技及び「KUWATA CUP 2019」の公式ソングである。無論、この曲で聴けるメロディとボキャブラリーはまさに桑田流のそれだが、この曲で聴ける桑田の歌声は、あの紅白で見せた“みんなのサザン”、“無二のポップアイコン”という類のそれとはやや趣が異なる。日本のシーンを牽引したレジェンドボウラーたちへのリスペクトとボウリング場への誘いが盛り込まれたこの曲は、ただただ微笑ましいまでにピュアであたたかな、桑田の“ボウリング愛”で編まれているのだ。

 昨年、デビュー40周年を記念したプレミアム・アルバム『海のOh Yeah!!』をリリースしたサザンは、今春、全国アリーナ&ドームツアーに出る。これまで主にサザンの活動中はサザンのみに、ソロ活動中はソロのみに集中していた桑田にとって、今回の『レッツゴーボウリング』のリリースは異例のケースと言えなくもない。サザンは勿論、桑田単独のソロ名義とも異なる動きだからこその“& The Pin Boys”名義だったのかもしれない。

 どんな大舞台でも、ひとたび「勝手に~」を歌えば、すぐに二十代の頃のような“暴れん坊モード”のスイッチが入る。これは40年のキャリアを持つベテランとして、何とも素敵な所作ではないか。そしてひとたびボウルを手に取れば、いつでもボウリングに熱中していた少年の頃の自分に戻ることができる。これはひとりの大人として、とても魅力的な姿として映る。

 紅白とボウリング。サザンとソロ。愛と友情とリスペクト。大人だからこそ、ベテランだからこそ、桑田だからこそ実現したこうしたアクションに、来月(2月26日)63歳を迎える彼がなおもエネルギッシュで在り続ける秘密の一端を見たような気がした。「KUWATA CUP 2019」の決勝大会、それを経てキックオフを迎えるサザンのツアー、どちらも開催が楽しみな2019年の新春である。

text:内田正樹

◎リリース情報
桑田佳祐 & The Pin Boys
シングル『レッツゴーボウリング』 (KUWATA CUP 公式ソング)
2019/01/01 RELEASE
<完全生産限定盤(CD+ピンズ+ポスター+応募シリアルコード)>
VIZL-2000 / 1,111円(tax out)
※新春ストライクパッケージ仕様
<通常盤(CD+応募シリアルコード) >
VICL-38400 /600円(tax out)
<アナログ盤(7inchレコード+応募シリアルコード) >
VIKL-30100 / 1,300円(tax out)
<完全生産限定盤(CD+ピンズ+ポスター+応募シリアルコード)>
※ボウリング場限定パッケージ
※新春ストライクパッケージ仕様
NZS-800 / 1,111円(tax out)