22年間の現役生活で史上最多の427敬遠を記録している王だが、セリーグ史上初の三冠王を獲得した1973年には、シーズン45敬遠のプロ野球記録をつくっている。
そんな中でもコント顔負けの“珍敬遠”シーンとして話題になったのが、8月21日の広島戦(広島)。
巨人は1回2死二塁で4番・王が打席に入った。先取点を阻止したい広島ベンチの指示はもちろん敬遠だ。
ところが、佐伯和司の2球目は、どこをどう間違ったのか、ハーフスピードの甘い球がど真ん中へ。敬遠されるものとばっかり思っていた王は目を白黒させ、せっかくのホームランボールなのにバットが出ない。
これには立ち上がってミットを構えていた捕手・西沢正次もビックリ仰天。なんと、ボールを後逸してしまった。
さらに山本文男球審も予期せぬ事態に気が動転したのか、ど真ん中のストライクなのに、「ボール!」と宣告してしまった。
「ど真ん中の球。バッターもキャッチャーも、そして、アンパイアも3人が3人とも驚いちゃったんじゃない。完全なストライクだったからね」(王)。
その佐伯は3点差の9回に王に追撃の2ランを浴びたものの、初回のコントロールミスが失点につながらなかったことが幸いし、被安打3の3失点で完投勝ちしてしまった。
敬遠が申告制になった現在では、こんな面白いハプニングも見られなくなったのが残念だ。
●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。
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