福島県の内堀雅雄知事は8月20日の定例記者会見で「国や東電に対しては環境や風評への影響などについて、しっかりと議論を進めて丁寧に説明し、慎重に対応していくことを求めたい」と語ったそうだ。官僚経験者の私に通訳しろと言われれば、「海洋放出反対とは言ってませんよ。『風評への影響』対策で、地元を黙らせるくらい十分なお金をはずんでくださいね」という意味になる。

 20年夏のオリンピックの開会式では、安倍総理が、「日本は、福島第一原発事故を見事に乗り越えました。私は、世界中の皆様から寄せられた温かいご支援に心から感謝するとともに、何よりも、幾多の困難を乗り越え、見事に復興を成し遂げた福島県民の皆様の献身と勇気に対して、世界中の友人たちとともに、心からの敬意と感謝の気持ちを表したいと思います。」と胸を張ることになるだろう。

 もちろん、そのころまでには、汚染水が日々希釈されて海洋放出されるという話はほとんど報道されなくなり、この安倍総理の晴れ姿が大きく紙面を飾ることになる。公聴会は終わったばかりだが、そんな光景が目に浮かぶのである。(古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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