後に判明したのだが、実は、この事実は、東電上層部はもっと早い段階で知っていたが、発表を当日まで延期した。その理由は、前日の7月21日が参議院選挙の投票日だったからだ。もちろん、安倍政権への「忖度」あるいは、政権からの指示があったことは明白である。

 この時の発表では、高濃度汚染水が漏れ出たとしても、「汚染は放射性物質の流出を防ぐシルトフェンス内側に限られ、沖合への影響はない」という説明だった。

 しかし、このフェンスは完全に仕切られたものではなく、海水が自由に出入りするものであることも判明。ここでも、沖合に出れば、汚染濃度も薄まるから大丈夫という考え方を取っていることがはっきりした。

 そして、その後は、この「騒ぎ」を奇貨として、「汚染水対策に政府が前面に出る」という方針が示されるが、そうは言っても、対策を実施するのはそれまでと同じ東電。政府が前に出るというのは、「カネは東電ではなく政府が出す」というだけの意味だった。ここでも東電を破たんさせないという方針が堅持されたのだ。

 結局、その後遮水壁が完成しても効果は限定的だという予想通りの結果が出た。福島第一原発の敷地は汚染水タンクで埋め尽くされつつあり、あと2年ほどで、タンク増設の土地が不足することになる。しかし、放射性物質除去システムではトリチウムは除去できないという問題も含め、汚染水問題は放置されたまま、今日に至った。

「アンダーコントロール」が大嘘だったと言われないためにはもう待てないという事情

 ブエノスアイレスで開催されたIOC総会で東京オリンピック・パラリンピック開催が決まったのは、この汚染水騒動が少し収まった13年9月7日だ。当然のことながら、IOCでは、東京の放射能汚染を懸念する声が上がった。

 安倍総理の「天下の大嘘」と言われる「アンダーコントロール」発言が飛び出したのは、まさにこの時だ。「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は統御されています(アンダーコントロール)」「東京には、いかなる悪影響にしろ、及ぼしたことはなく、今後とも及ぼすことはありません」「汚染水の影響は、完全にブロックされています」と安倍総理は大見得を切った。もちろん、事実からかけ離れた、口から出まかせに近い内容だが、これは世界への公約となった。

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