【写真】バンドマスターを務め、キーボードを演奏した松任谷正隆
「必ずかっこよくする。オレを信じろ」
そう言って松任谷正隆はユーミンをステージに送り出した。
8月5日、国営ひたち海浜公園で開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018」で、ユーミンは初めて夏フェスのステージを踏んだ。
「ほかのアーティストではできない、由実さんだからこその在り方を示したかった」
そう考えた松任谷が決めたユーミンの衣装はショートパンツにバッファローチェックのシャツ。その下はタンクトップ。そして、テンガロンハット(写真参照)。
「あの“カウガール”のスタイルは、フランシス・コッポラがベトナム戦争の狂気を描いた映画『地獄の黙示録』がヒントになりました。プレイメイトが慰問で、ヘリコプターから戦場に降りてきて踊るシーンがあるでしょ。あのイメージ」(松任谷)
その松任谷のアイディアに乗ったユーミンはハイテンションでステージに飛び出した。
「発想のもとが『地獄の黙示録』と言われたので、群衆を挑発する気持ちでステージに上がりました。ストッキングをはいて夏フェスのステージに登場したらしらけるでしょ? だから、生足。日ごろからエクササイズしているので。私としては、侍が刀を抜いたような気持ちかな。デビューして45年間、私はさまざまなアイコニックなファッションでステージに立ってきました。トレンチコート、60’sファッション、イヴ・サン=ローラン……。マタドールやフラガールも。カウガールはその中の1つです。私が今までにトライしていないのは、寅さんスタイルくらいでしょう。9月にスタートする自分のツアーでも、ありとあらゆる、色とりどりの衣装をご披露します」(ユーミン)
カウガールのスタイルでユーミンが登場すると、ステージ前に集まった群衆がウオォー! とうなりを上げた。
約5万人の観客を笑顔で見まわすユーミン。その姿に、ローリング・ストーンズのヴォーカリスト、ミック・ジャガーが重なった。ミック・ジャガーもユーミンも、目の前の群衆のパワーをそのまま自分のエネルギーにしてしまう。だから、用意された舞台のスケールが大きければ大きいほど、存在感が増し、力を発揮する。