「松任谷さんからは、浮足立つなよ、と言われていたけれど、実際にステージに上がると、オーディエンスの数はまったく気になりませんでしたね。ステージに出て目の前のお客さんたちを眺めて、あっ、大丈夫だ、と。5万人のフェスでも、5000人のホールでも、緊張感は同じ。私はありとあらゆる興奮や緊張を体験しているからね。2000年代の初めに、音楽とサーカスとシンクロナイズド・スイミングやアイススケートをコラボレートさせたシャングリラというスケールの大きいエンタテインメントをやりました。あのステージに立ったときの武者震いを経ているので、もう、たいがいは大丈夫」(ユーミン

 1曲目は「Sign Of The Time」。時が教えるもの、時代の示唆などの意味をはらんだ曲を松任谷は選んだ。しかし、フェスの主催者側からは反対意見も。「誰もが知るヒット曲、代表曲から始めないと不利です。客が逃げてしまいます」と強くアドバイスされたという。正論だ。客層はユーミンのいつものツアーとは違う。この日は7つのステージに計51組のアーティストが出演していた。きゃりーぱみゅぱみゅのファンもいる。スキマスイッチのファンがいる。サンボマスターのファンがいる。ヘヴィメタルのバンド、マキシマムザホルモンのファンも大量にいた。ほぼアウェイの環境。目の前のパフォーマンスに興味を持てなければ、客が別のステージに流れていくリスクはある。

「でも、僕は譲らなかった。10代、20代のオーディエンスが集まり、若いバンドもたくさん出演する夏フェスで、46年のキャリアを持つ由実さんが歌うんです。大人として、しっかりとテーマを持つべきだと思った。だから、今さまざまなことに気づくとき、というメッセージ性のある『Sign Of The Time』を1曲目に持ってきました。この曲で去っていくような客は、何を歌っても去っていきますよ」

 松任谷には確信があったのだ。

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そして中盤で歌ったのは、ファンに愛され続けているあの名曲