そこでカギを握るのが、地元経済界の支持だ。企業が与党に反旗を翻して、「経済のために辺野古基地建設反対」「基地がない方が豊かになれる」と主張すれば、単なる基地反対よりも、一般市民は、はるかに心強く感じるはずだ。与党側が脅し文句に使う、「基地がなくなれば、お前たちの生活もなくなる」という言葉も通じなくなる。

 そこで非常に気になるのが、沖縄の経済界の重鎮がオール沖縄と距離を置き始めていたことだ。今年2月の名護市長選後には、オール沖縄の共同代表だった金秀グループの呉屋守将会長がその職を辞した。もう一つの柱であったかりゆしグループも4月にオール沖縄を脱会した。その背景には、オール沖縄が左翼的政党の活動に利用されているのではないかという経済界の警戒感があるようだ。

 しかし、経済界の大半がオール沖縄から自民党側に移行すれば、この選挙に非常に大きな影響を及ぼす恐れがある。幸い、共同代表を退いた呉屋氏は、今回の選挙で玉城氏支持を打ち出した。沖縄の経済界のカリスマ的リーダーが引き続きオール沖縄側についてくれるのは非常に大きい。一方、かりゆしグループは、これとは一線を画し、自主投票を打ち出している。両グループのトップとは、私も以前にシンポジウムのパネラーとして話をしたことがあるが、見識が深く、胆力を感じさせる立派な方々だった。この両重鎮が本気で動けば、かけがえのない大きな力になるだろう。今回かりゆしグループが自民党側に行かないことがせめてもの救いではあるが、できれば、もう一度オール沖縄に戻ってもらえれば、翁長時代に近い体制ができる。現状のままでは、オール沖縄側にとっては大きな痛手だ。

 この選挙に負けたら、翁長前知事が最後まで訴え続けた「沖縄のアイデンティティー」が否定される。その危機感があるのであれば、リベラル系は、自己主張を抑え、経済界の重鎮たちに、土下座をしてでもオール沖縄に戻ってくるように「お願い」すべきではないかと思う。選挙公約や戦い方で相違が出るのであれば、リベラル側が譲歩して経済界に歩み寄って欲しい。翁長前知事の「これはイデオロギーの戦いではない」という意味をもう一度噛み締めて、右から左まで幅広い支持を得て、本当の意味で「沖縄のアイデンティティー」を確立するための戦いに結集するのだ。その度量がリベラル側にあるのかが、今問われている。

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