大阪桐蔭の初戦は8月6日の大会2日目だった。作新学院との一戦に先発したのはエース・柿木。見事な完投勝利を挙げた。ただ、スカウトたちは甲子園で根尾がどんなピッチングをするか「も」見たかったのだ。投手なのか野手なのか。根尾の高いポテンシャルのどちらに比重を置いて見るのか。それによって、ドラフト戦略は変わってくる。

 ソフトバンク・永井智浩球団統括本部編成・育成部長兼スカウト室長は「投手がダメだというわけじゃなくて、それ以上に野手としての評価が高いので、野手として見ている球団は多いと思いますよ。でも、甲子園でえらいピッチングでもしようものなら、また評価がガラッと変わるでしょう」と言う。

 全出場校が出そろったのは、8月12日の大会8日目。ところが翌13日、なんと11球団のスカウトたちが“居残り”した。つまり「投手・根尾」の甲子園でのパフォーマンスを見るためだ。2回戦でも、スカウトがネット裏にずらりと顔をそろえたのだ。

 実は20年前の夏、横浜・松坂大輔が甲子園を席巻した時にも同じような現象が起こった。また、球団によっては、大舞台でのパフォーマンスでの評価を加味するために、担当スカウトと球団首脳がお目当ての選手の試合をチェックするケースもあるが、各球団が競うようにして2回戦にも視察へ来るというのは、まさしく異例中の異例である。

 ところが、大阪桐蔭の場合はこれだけでは終わらない。続く3回戦。つまり、3周り目。確認できただけでも、2球団のスカウトが姿を見せたのだ。続いてのお目当ては、3番手投手の横川凱(3年)。高岡商戦に先発した「控え左腕」を視察するためにプロのスカウトがまた、しかも3回戦の甲子園へとやって来たのだ。

「見たかったんですよ。こういう舞台でどれくらいのピッチングができるかを」

 そう語ったのは、オリックス・谷口悦司スカウトだった。関西担当で、大阪桐蔭OBでもあり、現役時代は左腕投手。動画を撮影しながらのチェックは、まさしくドラフト候補としての位置づけだ。

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3番手投手にもスカウトが注目