■人気薄の農・水産系や看護・福祉系が狙い目か

 全体的に低調な理系のなかでも、薬学と医学が近年、とりわけ志願者を減らしている。

「薬剤師の過剰が懸念されている気配があります。高齢化によりドラッグストアが人材不足ともいわれますが、薬剤師資格がなくても登録販売者の資格があれば間に合いますから。メディカル系は全体が下火です。もともと首都圏・関西圏の医学部は難関だったので、合格可能性を高めるには地方大学も考える必要がありますが、その地方の出身者を優先する地域枠を設定する地方大学が増え、地域外の人が合格しにくくなってしまった。これにより志願者が減っていると思われます。医学部の定員はここ10年で2000人ほど増えたので、強気で合格を狙える状況ではあるのですが」

 一時期はバイオなどで話題になった農・水産系も低調だ。逆に考えれば、こうした不人気学部が狙い目といえるのではないだろうか。

「生命科学も大きな話題になった時期がありましたが、バイオも含めて高校生が魅力を感じるようなトピックがないことが低調な理由。だから狙い目といえるかもしれません。けれども、2020年の東京五輪が終われば、今のトレンドがガラリとさま変わりすることも予想されます。前回の東京五輪後の1965 年、札幌五輪後の1973年はどちらも景気が悪くなりました。ただ、今回は昔ほどの先行投資をしていないので、どの程度影響があるかはわかりません」

 もしも東京五輪が終わってから再び不況期が到来するとすれば、好景気のあおりでやはり魅力を失いつつある介護福祉・看護系も、今だからこそ入学しやすい将来性の高い狙い目学部ということになる。

「看護系は新設大学も増加しており、全体として志願者も増えていますが、人材が足りないので就職に困ることはなく、得た資格は一生モノです。医療系も介護福祉系も同じで、長い目で見れば、超高齢社会には必要な仕事になってきます。その仕事がなくなることは考えられないので、確かに狙い目ではありますね。ただし、こうした職業直結型の学部は、強い意志を持って入学しないと、その後、勉学や実習などを続けられなくなるので注意が必要です」 

■自分にマッチした大学・学部が本当の狙い目

 今後の社会変化について予測することはできても、実際にどうなるかは誰にもわからない。

「だったら自分が好きな分野をめざすほかないでしょう。今の大人だって中学・高校生のころにやりたいと思った仕事をしているとは限らない。最も大切なことは、学び続けていくことなのです。さまざまな大学のなかから、ホームページで公開されているポリシーを読み解き、自分がこれだと感じる大学を探し出してください。そうした視点で探した大学や学部が本当の狙い目だと思いますよ」

 最後に、19年度入試を前に、受験生がやるべきことを聞いた。

「焦る必要はありません。夏から9月までは基礎固め。不得意科目を中心に勉強する。センター試験レベルの学力をきちんと身につけてください。それから、遅れがちになる理科や地歴・公民の対策を少しずつ始める。英数国が苦手なら、これも早めにカバーする。秋になれば志望大学も固まってくるので、各大学の個別試験対策を進めましょう。推薦、AOをめざす人は、夏ごろから高校の先生と相談してください。指定校推薦以外は不合格もあるため、一般入試の準備も進めること。あきらめないで頑張れば、模試の得点がぐぐっと伸びる時があるので、そうなったら合格まであと一歩です」

(文/笠木恵司)

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