もうひとつは「波」は子どもが生まれてからやってきました。
――お子さんが生まれてからの「波」というのは?
引き金になったのは「経済的な不安」です。夫には浪費癖があり、子どもが生まれてからも給料の半分以上は趣味に費やしていました。生活費もままならない状態になっても、私は「食べさせてもらっている」という意識が強く、文句を言えないまま不安ばかりが大きくなりました。
そして子どもが1歳半の時、育児の疲れもあり、私の体は以前の「動けない状態」へと使づいていきました。なんとか最低限度の育児はするものの、私の不安は苛立ちに変わり、苛立ちは子どもに向かっていく。子どもを「殺してしまいたい」と思うほど追いつめられました。ふり返れば、このときが一番苦しかった時期です。
――お子さんとりょうこさんは、どうなったのでしょうか?
まず、母を説得して子どもを預け、私自身が3カ月間、入院しました。
医師からのアドバイスもあり、「子どもの命を守ること」を最優先として、一時期は親元で暮し、自宅に戻ってからは夫の給料を私が管理しました。
その後も順風満帆というわけではありません。やはり私が受けていた傷も深く、子どもも発達障害だったため集団生活になじめませんでした。小学校の校長先生からは「出て行け」と言われたこともありますが、どの相談機関も支えてはくれませんでした。
風向きが変わったのは、入院先で知り合った児童精神科医の先生に受診してからです。先生だけが子どもや私の苦しさと向き合ってくれました。診察は3カ月に1回、10分程度。しかし、この時間がなければどうなっていたかわかりません。
先生は特別なクスリを出すわけでも、すべての問題を解決してくれるわけでもありません。でも子どもの話はどんなことでも疎まずに聞きます。私が悩んでいる時は、心の折り合いがつくまで付き合ってくれます。ホントにこの時期、先生に合わなければ、私ひとりではムリでした。