期待の若虎・大山悠輔は、つくば秀英時代は通算30本塁打の大型遊撃手。投手としても最速143キロをマークする右の本格派だった。

 2011年夏の茨城県大会、2年生の大山は初戦の古河一戦に先発。6回を1安打1失点に抑えた。2回戦の海洋戦では3番ショートで出場し、2本塁打3打点を記録。4回戦の土浦三戦でも4打数2安打でチームの8強入りに貢献した。

 準々決勝の霞ケ浦戦、2度目の先発となった大山は、1点を先行された1回に同点タイムリーを放ち、4回まで2失点に抑えたが、1点リードの5回に逆転2ランを許し、7回6失点で降板。3対6で敗れた。

 翌12年夏は主将・4番。初戦の相手は、くしくも前年4回戦で対戦した土浦三だった。2対2の同点で迎えた7回、大山はリリーフのマウンドに立った。帽子のつばの部分には「泰然」の2文字が書いてあった。

 だが、変化球が抜け気味で決まらず、直球主体の配球が読まれてしまう。連打で1死一、二塁、4番打者に真ん中低め直球を右翼線に2点三塁打された。後続2者を連続三振に打ち取っただけに、惜しまれる1球だった。

 2点を追う9回2死、「3年間一緒にやってきた仲間、すべての人の思いを込めて」打席に入った大山は、左前にこの日3本目の安打を放ったが、次打者が三振に倒れ、高校最後の夏が終わった

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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