「行政文書」とは、(1)役所の職員が仕事上作成したり、あるいは仕事上取得したもので、しかも、(2)職員が組織的に利用するものであり、さらに、(3)その職員の所属する役所が保有しているものである。

 この三つの要件をすべて満たさなければ、「行政文書」ではないということだ。この定義から見ると、上記の係長と課長補佐の会話の中で出てくる文書は、行政文書にはならないという解釈が成り立つ。もちろん、実質的には、どう考えても行政文書なのだが、重要なのは、そうではないという言い訳ができるかどうかだ。行政文書でなければ、情報公開請求があっても、「そんな文書は存在しません」で終わってしまう。上の例では、後で問題になった場合、次のように言い訳する。

課長:若い者が、自分の「手控え」として、自分のパソコンで作成し、自分のUSBに保存しているといったことが絶対にないとは言えませんが、それはあくまでも個人の財産です。組織としては、そういう資料は一切使われていませんし、役所のサーバーにも書類棚にも存在しません。

 ここにはいくつか嘘がある。実際には組織として2人以上の職員が職務に利用している。しかし、それが事実だとしても、課長を含めて3人が口裏を合わせると、証拠がないので行政文書ではないと言い張ることができる。そこが重要なのだ。

 今回の見直しでは、「行政文書」の定義の見直しは入っていない。そのためには法律改正が必要だが、今回の見直しの真の目的が、「都合の悪い情報の管理強化」だから、行政文書の定義拡大は、その「目的」に反するということなのだろう。

■役所間の会議の議事録を作らなくてもよい?

 しかし、役所間の会議をやったのであれば、普通は議事録を残すはずだし、国民から見れば、残すべきだと考えてもおかしくない。そこで、「議事録がありません」という言い訳を許さないようにするためには、法律で議事録の作成義務を課せばよい。現に公文書管理法第4条には、文書を作成すべき事項が、いくつか列挙されていて、それらについては作成義務がかかることがわかる。しかし、それ以外については、軽微なものは作成義務なしと書いてあって、何が軽微なのかは何も書いていない。そこで、恣意的な解釈ができることになる。結局、どこまで作成義務がかかっているのかが判然としないのだ。

 また、法律には「経緯」について文書作成義務ありと書いてあるが、各省レベルの規則では、作成義務の対象を勝手に狭く解釈している例もある。

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