官邸で7月20日、開かれた「行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議」で、一連の公文書スキャンダルを受けて再発防止策が決定された。「行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議」というと、何か特別な会議なのかと思うかもしれないが、議長が安倍総理で、構成員はその他の全閣僚。何のことはない、閣議と同じだ。
つまり、ここで決まった「公文書管理の適正の確保のための取組について」は通常の閣議決定と同様、全て官僚が準備し、大臣たちがそれにお墨付きを与えたものに過ぎない。国会で議論されたものでもなければ、独立の第三者が議論して決まったものでもない。この対策を作ったのは、問題を起こした張本人の官僚たちとそのおかげで自分の不正を隠すことに成功した安倍総理の取り巻きである。
それを知ってしまえば、おそらく、この文書には何の意味もないということは誰でも予想できるだろう。
この会議で、安倍総理は、「危機感を持って、再発防止に全力を尽くす」と述べたが、ここでいう「再発防止」とは、「何の」再発防止なのか。昨年来の議論を見ていると、安倍政権及び官僚たちが持つ基本的な目標が、我々国民の問題意識とは、全くかけ離れたものであることがわかる。
公文書管理の問題は、細かい議論をしていくと、わかりにくく、素人にはとっつきにくい。だからこそ、今日でも、ほとんど意味のない制度が温存されているのだ。
今回は、この問題を、極力わかりやすく理解してもらうために、その問題点を、政治家や官僚たちの会話を使いながら解き明かしてみたい。
■安倍総理の危機感は「危うく政権が倒れるところだった」
まず、公文書管理の在り方の見直しをする動機であるが、安倍総理と秘書官の会話を想像してみると、こういうことになる。
安倍:モリカケでは、役人がヤバイ話を文書に残してたから、危うく命取りになるところだったよ。それにしてもどうしてあんな危ない話を文書で残しておいたのかな。オレは、てっきり役人というのは、そういうものは残さないようにしてると思っていたんだけどなあ。
秘書官:そうなんですよ。文科省も財務省もお粗末でしたよね。はっきり言って、あれじゃあ官僚なんて言えませんよ。素人同然です。政治家の名前を決裁文書に残すなんて、ありえませんよ。
安倍:そうだよな。そんなことされたら、こっちは、本当に清く正しく美しく生きて行くしかなくなるよな。政治ってのは、そんな甘いものじゃないのにな。