■毎晩のおつまみ作りを少し億劫に感じることも

 熟年夫婦というよりは、まるで恋人同士のような関係の二人だが……。

「ベッドは別々ですよ。寝返りが気になる年頃ですから(笑)。腕まくらはしませんね。でもふたりで出かけるときは、自然と腕を組んだり、手をつないだり。ご近所さんに目撃されて冷やかされることもありますが!」

 ラブラブなふたりに困ったことはなさそうだが、そうは言っても、毎日の生活で戸惑うことはないのだろうか?

「一番は食事ですね。彼は毎晩必ず晩酌をするので、“おかず”というより、お酒に合う“おつまみ”メニューを考えなければなりません。私は料理は習うくらい好きで、作るのも、食べるのも大好きなんですが、毎日、おつまみの皿数を増やそうと思っていたら、作るのが少し億劫になってきて(苦笑)。だから、食材が3つあれば、3つで1品の料理を作るのではなくて、3つで2品の料理を作るなど工夫しています。例えば、レタスとたまねぎとトマトがあれば、ミックスサラダにはしないで、レタスの玉ねぎドレッシング和えと冷やしトマトにするとか。あ、あんまりおつまみにならないかしら(笑)」

 あや子さんが作るおいしい料理の甲斐あって、ご主人は少しスリムになった。独身時代も自宅できちんと食事をとっていたご主人だが、あじフライや市販のお惣菜とどうしても決まったメニューが多くなりがちで、野菜も不足気味だった。

「実家が薄味だったので、口に合わないか心配して、大丈夫? と聞くと、『おいしいよ』と言ってくれて。あるときは、お皿にハーブソースを敷いた上に魚のソテーをのせて出したら、『自分じゃ絶対やらないな、レストランみたい!』って喜んでくれたり。そんな反応がうれしくて、なんとか毎日作っています」

介護の不安は消えないけれど親族の言葉が心強い

 ご主人の両親は、ふたりが住む家からは電車で1時間ほどの少し離れた場所に暮らしている。ふたりとも、実にさっぱりとしていて、あや子さんとは居心地のいい距離感で接してくれるという。

「長男の嫁なので、しっかりしなくてはいけないとは思っていますが、お義父さんお義母さんも、私にプレッシャーをかけるようなことは言いません。母の日、父の日のプレゼントも、彼はしないんです。習慣がないみたいで。よくお嫁さんが気を利かして、プレゼントしたりしますが、それもしなくていいって言って。仲が悪いわけでは決してなくて、そういう親子関係なんだと思います。だから、私もその言葉を信じて。でも、きっと気も遣ってくれていると思います。何も言わないけれど、空気みたいなやさしさが伝わってくるんです」

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