■大迫のスタメン起用にこだわるな

 そこで、あえて大迫のスタメン起用にこだわらない方法もある。初戦で活躍した選手をベンチに置くのは監督として勇気のいることではあるが、もともと過密日程での総力戦を見越して選んでいるメンバーだ。セネガルのディフェンスに対しては武藤嘉紀の方がハマる可能性が高いと筆者は考える。

 5月30日のガーナ戦ではゴールこそならなかったものの、惜しいシュートを3本放つなど、武藤は存在感を示した。彼の良さは機動力を駆使して相手の間でボールを受けられること。それなりにコンタクトプレーでの強さもあるが、よりストライカーとしてゴールを狙っていきながら、臨機応変に周りの選手を使っていける。一瞬の動き出しで柴崎岳や大島僚太から縦パスを引き出し、セネガルのセンターバックが付いてくればワンタッチで味方にはたくといった選択肢も取れる。

 その武藤でもセネガルのセンターバック2人をかわして決定的なシュートまで持ち込むのは難しいが、かわしきれなくても相手がブロックにきた股下を破るシュートを放つなど、ゴール前の状況に応じたフィニッシュに持ち込むことはできるだろう。実際、武藤はブンデスリーガでサネと対戦した時に、果敢にタックルしてくる足元に隙があると感じたようだ。

 また、武藤は守備時のプレスで大迫を上回るものを出せる。登録メンバー23人の中で武藤、香川、乾、原口という前の4人は“ゲーゲンプレス”とも呼ばれる、攻守が切り替わった瞬間から相手にプレッシャーをかけていくディフェンスに最も適している。そこでボールを奪えれば、相手の守備のズレを狙って動き出し、味方からタイミングよく縦パスが出てくれば、そのままゴール前で勝負できる。

 もちろん、大迫と武藤が2トップで起用されるシチュエーションもあり得るし、ケガから復調気配の岡崎慎司というチョイスもある。いずれにしても、セネガルはコロンビアとも特徴が異なるため、初戦で出番のなかった選手が活躍する余地が大きい。その候補の1人が武藤と考えている。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行予定。