ファンの涙を誘ったのは、攝津正(ソフトバンク)だった。かつて5年連続で開幕投手も務めたエースが、今季初登板初先発となった5月22日の西武戦(ヤフオクドーム)で5回3安打無失点、5四球を与えながら要所を抑える粘りのピッチングで2016年9月11日以来618日ぶりの勝利。お立ち台の上で無数のフラッシュを浴びると、ここまでの道のりを振り返り、涙をこらえて目頭を熱くさせた。だが、続く6月5日のヤクルト戦(神宮)では3回6安打5失点(自責4)。競争が激しく、ケガ人が戻って来れば登板する機会も減る。勝つには勝ったが、攝津にとってはここからが生き残りをかけた正念場になる。

 そして彼ら以外にも、吉見一起(中日)が先発7試合中5試合でQS(クオリティ・スタート)をクリアして2勝1敗、防御率3.86。内海哲也(巨人)は3試合に登板して1勝0敗ながら防御率2.55をマーク。石川雅規(ヤクルト)は防御率こそ5点台だが、ここまで3勝を挙げるなど、衰えが指摘されてから数年が経過した元エースたちが、健在ぶりを見せてファンを喜ばせている。怖いもの知らずのルーキーたちの活躍も良いが、栄光と挫折の両方を知り、崖っぷちから這い上がって投じる一球には、彼らの強い思い、歩んできた人生が詰まっている。その雄姿に、我々は「頑張れ」と拳を握り、勇気をもらう。