中日・松坂大輔 (c)朝日新聞社
中日・松坂大輔 (c)朝日新聞社

 交流戦を迎えてさらに熱戦が展開されているプロ野球だが、今季の戦いの中でひとつのトレンドになっているのが、崖っぷちの男たちによる意地の復活劇である。

 その筆頭は、“平成の怪物”松坂大輔(中日)である。1998年の伝説の甲子園春夏連覇から日本球界のトップを走り続けてきた時代の寵児は、アメリカに渡った後の20代後半からケガに苦しみ、2015年に日本球界復帰を果たすも3年間で1試合に登板したのみ。誰もが「引退間近」と覚悟した。しかし37歳で迎えた今季、テスト入団の末に中日のユニフォームに袖を通すと、春季キャンプから順調な調整を続けて4月5日の巨人戦(ナゴヤドーム)で550日ぶりの1軍登板。そして登板3戦目、4月30日のDeNA戦(ナゴヤドーム)で6回3安打1失点の内容で、公式戦では米メッツ時代の2014年6月10日以来4年ぶり、日本では西武時代の2006年9月19日以来12年ぶりの白星を手にした。

 そして、称賛されるべきは、その後のピッチングである。5月13日の巨人戦(東京ドーム)では右足の張りで3回途中での緊急降板となったが、続く同20日の阪神戦(ナゴヤドーム)で6回3安打1失点、1死球のみの7奪三振で2勝目をマーク。さらに同30日のオリックス戦(ナゴヤドーム)ではリリーフ陣が打たれて連勝は逃したが、6回を1安打無失点、4四球、今季最多の9奪三振をマーク。投げる度に力強さを増し、カットボールを主体とした新たな投球スタイルを自分のものにし、6月8日のソフトバンク戦(ナゴヤドーム)で5回3安打1失点の好投で3勝目。現日本球界最強の打者と言える柳田悠岐から2三振を奪った投球は見事。ケガさえなければ、2ケタ勝利も届かない数字ではない。

 その松坂とチームメイトの山井大介(中日)も意地を見せている。2015年から16年にかけて先発登板11連敗を喫して中継ぎに回り、昨季は登板自体が2試合のみ(2勝0敗、防御率1.50)だったが、5月10日に40歳を迎えたプロ17年目は、今季初登板初先発となった5月22日のDeNA戦(横浜)では9回4安打で見事な完封劇。さらに6月3日の日本ハム戦(札幌ドーム)も6回3安打無失点の好投で2勝目をマーク。今後もローテの谷間での登板にはなるだろうが、その間隔は短くなりそうだ。きょう12日の楽天戦に先発する予定。無傷の3連勝はなるか。

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SB攝津正は618日ぶりの勝利