外野手でくすぶっている代表格が伊志嶺翔大(ロッテ)だ。ドラフト1位で入団し、1年目にいきなり110安打、32盗塁をマークする活躍を見せたものの、それをピークに成績は下降の一途を辿っている。ベテランも若手も外野手が多いチーム事情を考えると、ここから巻き返しを図るのはなかなか厳しい状況だ。しかし二軍では安定した成績を残しており、走って守れる右打ちの外野手という希少性があるため、他の球団では上手くはまることも十分に考えられる。


 
 若手として注目したいのが和田恋(巨人)だ。バッティングは年々力強さを増しており、今年はイースタンの打撃部門で軒並み上位に顔を出している。高校時代は投手も兼任していただけに肩の強さも申し分ない。1学年後輩の岡本和真(巨人)がブレイクを果たし、毎年大型補強を繰り返す巨人ではなかなかチャンスは巡ってこないが、他球団であれば大田のように一気に才能が開花する可能性もあるだろう。

 最後に取り上げたいのが藤浪晋太郎(阪神)である。現実的にはトレードで放出することは考えづらいが、今のピッチングを見ているとどうしても環境を変えた方が良いように見える。貧打に悩むチーム事情を考えても、藤浪を使った大型トレードで野手陣をてこ入れするというのも一つの方法ではないだろうか。

 かつては、二年連続三冠王に輝いていた落合博満(当時ロッテ)を1対4の交換トレードで中日が獲得したケースや、秋山幸二、渡辺智男、内山智之(当時西武)と佐々木誠、村田勝喜、橋本武広(当時ダイエー)の3対3など超大型トレードもあったが、ここ数年はそこまでインパクトのあるケースは見られない。また、メジャーに比べると選手の移籍をマイナスと捉える風潮がまだまだ残っていることも確かである。しかし、場合によっては冒頭で紹介した榎田や大田のようにトレードで生き返る選手がいることも確かだ。これからも彼らのようなケースが増えることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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