ウイルスには抗菌薬は効きません。ですから、風邪に抗菌薬を使うのは、効果がないばかりか、乳幼児ではアレルギー性疾患を増やす可能性があります。
また、風邪に引き続いて二次的に細菌感染を起こし、抗菌薬が必要になることはあります。しかしこの場合も、最初から抗菌薬を使って予防するのは難しいことがわかっています。2007年にロンドン大学の研究者たちが発表したイギリスでの大規模研究では、風邪などに抗菌薬を投与した場合、4000人に抗菌薬を投与してやっと1人の重症な合併症を予防できる、という結果になっています。
高齢者が気管支炎になっている場合は抗菌薬で肺炎を予防する効果はありますが、それ以外の場合には合併症を予防する目的で抗菌薬を投与することは勧められない、と結論付けられているのです。
子どもでは風邪に引き続いて細菌性の中耳炎を起こすこともよくあります。小児急性中耳炎診療ガイドラインでは、中等症以上の中耳炎になってしまった場合や、軽症でも3日間観察して改善が見られない場合には、抗菌薬の投与が推奨されています。このような場合にはためらわずに抗菌薬を使うことが大切です。また、症状が良くなったからといって抗菌薬の使用を途中でやめてしまうと、薬が効かない耐性菌を作り出してしまう恐れがあります。抗菌薬は、医師の指示通り飲み切ることが大切です。
どんな薬もメリットデメリットがあります。必要以上に恐れることなく、上手に使っていけたら良いですね。
◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表