「ママが帰ってくるまでに宿題をやっておいてね」と言っても、結局はやっていない——そんな悩みを抱える働く親は少なくありません。でも、子どもが宿題をしないのは、やる気がないからではなく「取り掛かりのハードルが高いから」と語るのは、東大理三に子ども4人が進学した佐藤亮子さん。でも「子どもが動く方法はある」といいます。本記事では、中学受験カウンセラー安浪京子先生との共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』から一部を編集してお届けします。

 働くお母さんから受ける時間管理の相談で多いのは、「私が帰ってくるまでに宿題をやっておいて、と子どもに言っているのにやっていません」というもの。

 疲れた親にとって、帰宅後、子どもの宿題を見るのはかなりつらい。やはり、帰ってくる前に済ませておいてほしいと思う気持ちはよくわかります。提出必須の宿題は、済ませておいてもらえると安心ですよね。しかも、仕事から帰ってからは、親にとって息つく暇もないほど忙しい時間帯です。すぐに夕ご飯の支度をしなければ、と気は焦ります。

 しかし、子どもは「あっ、お母さんが帰ってきた!」とホッとしたり嬉しかったりしますが、忙しく立ち働いているお母さんのそばで話しかけることもできず、他の遊びを始めます。そうこうしているうちに、勉強への気持ちは薄らいでいく。

 そこで、親は「宿題はやったのよね」と聞き、当然子どもはやっていないので、「なんでやってないの!」と𠮟られる、という構図です。

 でも、よく考えてみてください。学校で1日過ごし、疲れて家に帰り着いた子どもが座ってすぐに「宿題をするぞ」と思うでしょうか? 

 家には、見ている親がいないのに、そこで疲れた体に鞭打って勉強をする子はいません。

 「帰る前に宿題を済ませておきなさい」と言うのは、子どもの心理状態に全く合っていないのです。その苦行ともいえることをやらなかったからと、帰宅後に𠮟るというのは、間違っていますよね。

次のページへ子どもも「宿題はしないといけない」とわかっている
著者 開く閉じる
佐藤亮子
佐藤亮子

さとう・りょうこ/4人の子ども全員を東京大学理科三類に合格させた実績を持つ教育・子育てアドバイザー。著書に『佐藤ママの子育てバイブル 学びの黄金ルール42』(朝日新聞出版)、安浪京子さんとの共著『中学受験の意義 私たちはこう考えた』(朝日新聞出版)など。

1 2 3