3軒目の『鈴傳』は1850年創業の酒屋で、現在は7代目の磯野真也さんが店を守っている。磯野さんの父の祖父、つまり4代目のころ にはすでに店先で酒を呑める「角(かく)打ち」をはじめていたという。現在は酒屋の横に「スタンディングルーム」があり、種類豊富な日本酒を正一合で出し、瓶ビール、焼酎、ウイスキーも置いている。『鈴傳』はつまみや酒を買う場所があり、そこでキャッシュオン。ただし、大きな酒屋と同じ店なので特に小銭を用意しなければいけないこともない。

『ニューカヤバ』は、店自体は広いが4~5人で使える丸いテーブルがいくつかあるので他の客と譲り合って使うのが作法。「3人くらいで独占してしまうお客さんもたまにいます。お酒を呑むと性格が出ますね」(服部さん)。

『立呑屋 佐々木』はカウンターと長テーブルがひとつ。こちらもカウンターは譲り合い。カウンターが埋まっているように見えても、ひとり客が来たらさらに詰めて入れてあげる。他の客との距離が近いので自然と話の輪が広がることもある。それは『ニューカヤバ』も同じ。そういうときにテーブルを独占したり横柄な態度で話をしたりする客は好かれないということを知っておこう。

 またこの2店は団体向けではない。「3人くらいがちょうどいいですね。6人だとお断りすることもあります。それくらいになるとやはりそこだけ話し声が大きくなったりするので、ちょっとうちには合わないですね」(服部さん)。

「4人でも周りに気を遣ってもらえるならいいんですけど、やはり3人くらいまでがいいですね。2人で来て個室で呑んでいるようなカップルもあまり歓迎できないです。店はみんなの空間であってほしいし、そういう空気を楽しんでほしいです」(佐々木さん)。

 一方『鈴傳』は店内奥が広く、必要とあらば酒屋でも呑めるようにするので、「10人で来ても大丈夫です。場所は作りますよ」(磯野さん)とのこと。

『ニューカヤバ』『立呑屋 佐々木』が共通してNGという不作法は、「酒を呑まない」こと。普通の居酒屋であれば3人で来て2人がソフトドリンクというのはアリかもしれない。しかし服部さんは「さすがに立ち呑みなのでね……」と苦笑し、佐々木さんは「ソフトドリンクでもいいんですけど、水だけというのはちょっと。水だけの場合は有料にしています」という。『鈴傳』は酒屋に隣接しているのでそういう客は来ないらしい。

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