象徴的だったのが5月12日、13日のソフトバンク戦だ。先発したバンデンハーク、武田翔太の140キロ台後半のストレートに完全に差し込まれるスイングが続いた。また、フォークの空振りが多いことから縦の変化に苦しんでいることがよく分かる。まだまだ一軍レベルのスピードボールと縦の変化球には対応できていないのが現状だ。
しかし、これはある意味高校卒のルーキーにとっては当然のこととも言える。プロ入り一年目にいきなり31本塁打をマークした清原和博(西武など)でさえ、一年目はリーグ最多の109三振を喫している。また、松井秀喜(巨人など)は11本塁打は放ったものの、57試合で50三振という数字が残っている。まずは当然の壁にぶつかっていると見るのが妥当ではないだろうか。
そんな中でも清宮の良さが表れている部分もある。それはとにかくバットを振るという姿勢だ。これまでの19三振のうち、見逃し三振はわずかに4個にとどまっている。そして空振りでも中途半端なスイングであるケースは少なく、たとえ体勢を崩されたとしても振り切ることができるのは良い傾向である。
前述した松井はルーキー時代に石井一久(ヤクルトなど)の内角から切れ込んでくるカーブに思わず尻餅をついて、それからしばらくサウスポーの変化球にバットが出なかったことがあったが、清宮は今のところそのような様子は見られない。いくらタイミングが合わなくても、バットとボールが離れていても振れるということは打者にとって得難い長所と言えるだろう。
そして、もう一つ大きいのがやはり高校卒ルーキーとは思えない落ち着きだ。デビュー戦でリーグを代表する投手である岸孝之(楽天)と対戦しても臆することなくストレートを振り抜きツーベースを放ったが、その姿には長年プロでプレーしているかのような貫禄があった。5月9日に通算2000本安打を達成した内川聖一(ソフトバンク)が試合後の会見で清宮は常に注目されている中で結果を出していることを称えるコメントを発したことも、清宮のメンタリティの強さをよく物語っている。
しかし、このままやみくもにボール球を振り続けたとしても当然結果がついてくるわけではない。ヒットにできる可能性の高いボールをいかに見極められるかがポイントになってくる。これは一朝一夕でできることではなく、相手投手、捕手の傾向や特徴もしっかりつかむことが必要になってくるだろう。