もう一つ気になるのが打球が上がる回数が少ない点である。これまで放ったヒットのうち、外野の頭を超えたのは初打席で岸孝之(楽天)から放ったツーベースと、プロ第一号となったホームラン、そして直近の5月15日に放ったライトオーバーのツーベースの3本でありフライアウトも2本しかない。低めの変化球に簡単に手を出すあまり、打球が上がりづらくなっているようになっている。しかし、ファンが清宮に期待しているのはやはりホームランである。結果が出ない時でも安易にヒットを求めずに長打を狙い続ける姿勢は見せてもらいたい。

 海の向こうでは大谷翔平(エンゼルス)が打者としてもホームランを量産し、完全にメジャーのファン、関係者の心をつかんでいる。大谷が去った日本球界で、新たな風を吹き込ませるとすればその筆頭候補は清宮であることは間違いない。

 また、大谷が球界の常識を打ち破ったように、清宮に求められているのも大衆の想像を超えるような活躍である。栗山監督からは近いうちに二軍での再調整を示唆するコメントも聞かれるが、近藤健介の復帰と同時に同じ左打者のアルシアが故障で登録抹消となり、清宮にとっては運がある状況と言える。このチャンスをつかみ、短期間で現在の課題を克服し、一年目は一軍で通用しないという前評判を覆すような活躍を見せてくれることに期待したい。

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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