しかし、そこで優秀さを示せたからと言って、官僚に創造力があるかというと、むしろ、その逆である。多くの官僚は、白紙に絵を描けと言われるとほとんどお手上げ状態になる。どんな課題が与えられても、最初にやることは前例の調査だ。何十年前までも遡って、資料を集め、それを深く分析して、現在の課題に当てはめて答えを出す。上司に説明するときも、過去はこうでしたというのを最大の正当化の根拠とする。

 第二の側面は、他省庁との権限争いだ。官僚は自分たちの縄張りに異常なまでの執着を示す。なぜなら、縄張りが大きければ大きいほど、天下り利権の可能性も広がるからだ。そのため、どんな役所も、社会・経済の変化に伴って生じる新たな変化を、常に縄張り拡大のチャンス、逆に言えば、縄張りを侵される危機と考える。例えば、新たな産業が芽生え、それをどの役所が所管するのかという争いが生じたとき、過去の争いを解決した時の経緯や最終判断の前提として両省庁が認めた考え方などが書かれた文書を詳細に検討して、新たな縄張りの境界線を確定する交渉に使うのである。

 第三の側面は、責任回避策としての側面だ。自分たちが責任追及を受ける事態が生じたときに、残してある文書のうち都合の良い資料だけは、開示して言い訳に使うことができる。

 これら三つの理由から、必要な資料、あるいは、必要とは言えなくても、「将来使わないことが確実とまでは言えない」資料は、「念のため」すべて保存される。そして、課長が、「あの時の資料探してくれないか」と言えば、1年生や係長が地下の倉庫や、時には、本省からは遠く離れたところにある倉庫にある埃だらけの資料を、マスクをかけて隅から隅まで探索する。ほどなく、「ありました」と言って資料は出てくるものなのだ。

 しかし、必要な資料はほとんど残しておくということと、それを国民に対して公開するということとは全く別問題である。それは、(1)、(2)、(3)の考え方からすれば当然のことで、文書は自分たちのものであるから、見せるのは、決して危ないことが起きないと確信できる場合に限るということになる。

 したがって、同じ文書であっても、何か世の中で問題となっている事件に関連して、自分たちの責任が追及される可能性のある文書について、課長が、「あの文書あるかな?」と聞けば、阿吽の呼吸で、部下は、「探しましたが見つかりませんでした」と回答してくるのである。

 そんな官僚たちの「公文書公開に関する本音の6原則」をまとめてみたので紹介しよう。

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公文書公開に関する本音の6原則