同様のキャリアを歩んだ先輩と言えるのが、元フランス代表FWティエリ・アンリか。彼もまたウイングプレーヤーとして1998年の地元開催フランスW杯の優勝メンバーに名を連ねたが、イタリアの名門ユベントスでは全く活躍できなかった。そこで移籍したアーセナルでは、ベンゲル監督によってストライカーのポジションを与えられた。その後は、元オランダ代表FWデニス・ベルカンプらとのコンビでゴールを量産。今や、アーセナルの“レジェンド”でもある。
現代サッカーでは、より選手の能力がトータル化され、複数のポジションでプレーするのは当たり前になっている。センターバックとボランチや、サイドバックとセンターバック、FWとサイドアタッカーなどを兼務するプレーヤーが数多く、その境界線もハッキリしないような戦術的な動きも発展している。そうした意味では、硬直化したポジションにスペシャリストを配した、ややクラシックなサッカーで見られたようなドラスティックなコンバートは減っていくだろう。しかし、こうしたコンバートによって眠っていた才能が開花する瞬間を目撃するのは、サッカーにおける大きな楽しみの一つとして残り続けていくだろう。