中日・松坂大輔 (c)朝日新聞社
中日・松坂大輔 (c)朝日新聞社
北谷キャンプ限定の「サポーターズユニホーム」(写真提供・喜瀬雅則)
北谷キャンプ限定の「サポーターズユニホーム」(写真提供・喜瀬雅則)

 松坂大輔を開幕からスタンバイさせるのか、それともシーズン序盤はしばらく様子を見るのか。それは、監督の森繁和だけが抱える悩みではなかった。

「いろいろと考えましたね。厳しいところもありました。準備期間があれば、もっといろいろとできたんでしょうけど」

 そう語るのは、中日球団の営業本部企画営業部の主任・北野勝則だった。元中日のリリーフ左腕だった50歳もここ2カ月間、松坂の調整ぶりに関し、指揮官と同じように熱い視線を注いでいた。なぜなら、自分の“決断”が松坂グッズの動向を大きく左右することを北野自身が自覚しているからだ。

 それはイコール、球団の収益を直撃する選択でもある。

 選手のグッズで、ファンからの注目度が非常に高いものの一品に「レプリカユニホーム」がある。選手着用のプロモデルを忠実に再現し、選手名のローマ字表記や背番号、胸の「Dragons」のロゴも全く同じ。1着7400円(税込み)と値段は張るが、コアなファンにとっては、選手と同じものを身にまとい、ナゴヤドームで応援するという喜びは何物にも代え難いのだ。

 ただ、その分だけ、作製にも手間暇がかかる。業者に注文を出してから完成までには約3カ月、発注数も最低で1千枚からになる。通常なら、シーズンオフのトレード、FAドラフトなどでの戦力補強を見極めた上で、10月から11月にかけてグッズの企画、発注を行い、2月のキャンプインと同時にキャンプ地やオンラインでの販売ができるよう準備を進める流れになっている。

 ところが、松坂の入団が決まったのは、今年の1月23日のこと。背番号「99」が発表されたのもその日だった。キャンプインが9日後に迫る中、松坂の新グッズに関してファンや報道陣から北野のもとに問い合わせが相次いだ。

 関心の高さは当然のことだろう。レプリカユニホームは間に合わないにしろ、他のグッズを急いで出せば、売れるというのも予測がつく。それでも北野は、沖縄・北谷でのキャンプイン初日に松坂グッズを売り出すことを一度は見送ろうと考えたという。北野が危惧していたのは、売り上げのことではなく実は“その後”のことだった。

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危惧されたこととは…