甲子園で優勝し、プロでも活躍の田中将大(写真・Getty images)
甲子園で優勝し、プロでも活躍の田中将大(写真・Getty images)

 甲子園優勝投手は大成しない。

 いつからか言われるようになったジンクスである。確かに甲子園優勝投手の中で、プロ通算200勝以上を記録したのは野口二郎(中京商→東京セネタースなど・37年夏、38年春優勝)と平松政次(岡山東商→日本石油→大洋・65年春優勝)の二人だけである。しかし200勝投手がほとんど出現しない現在の野球界にあって、この結果だけをもって「大成しない」と言い切るのは無理があるだろう。そこで過去20年間の甲子園優勝投手のその後から、ジンクスについて検証してみた。

 過去20年の春夏甲子園の優勝投手は春夏連覇が3度あったため合計で37人となるが、その後プロ入りを果たした選手は20人。半数以上の選手がプロに進んでいる結果となった。また、そのうちドラフト1位でプロ入りした選手は12人。プロ入り後の成績をまとめてみると下記の通りとなった。

98年春・夏:松坂大輔(横浜)   363試合164勝103敗2セーブ3ホールド
99年夏:正田樹(桐生第一)    123試合25勝38敗0セーブ4ホールド
01年夏:近藤一樹(日大三)    194試合33勝49敗1セーブ15ホールド
02年春:大谷智久(報徳学園)   293試合19勝29敗0セーブ102ホールド
03年春:西村健太朗(広陵)    470試合38勝34敗81セーブ77ホールド
04年春:福井優也(済美)     106試合29勝33敗0セーブ0ホールド
05年夏:田中将大(駒大苫小牧)  280試合151勝63敗3セーブ0ホールド
06年夏:斎藤佑樹(早稲田実)   74試合15勝23敗0セーブ0ホールド
07年春:田中健二朗(常葉菊川)  197試合10勝12敗1セーブ50ホールド
08年春:東浜巨(沖縄尚学)    65試合31勝16敗0セーブ0ホールド
09年春:今村猛(清峰)      355試合15勝27敗34セーブ97ホールド
09年夏:堂林翔太(中京大中京)  466試合309安打31本塁打130打点
10年春・夏:島袋洋奨(興南)   2試合0勝0敗0セーブ0ホールド
12年春・夏:藤浪晋太郎(大阪桐蔭)114試合45勝37敗0セーブ0ホールド
13年夏:高橋光成(前橋育英)   37試合12勝17敗0セーブ0ホールド
14年春:高橋奎二(龍谷大平安)  登板なし
15年春:平沼翔太(敦賀気比)   4試合0安打0本塁打0打点
15年夏:小笠原慎之介(東海大相模)37試合7勝14敗0セーブ0ホールド
16年夏:今井達也(作新学院)   登板なし
17年夏:清水達也(花咲徳栄)   登板なし※

注)松坂大輔、田中将大の成績は日米合算
※2017年ドラフト4位

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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