ただ、米国代表はちょっと変わったものを食べていて、小さな泥団子のようなものをつまんでいた。周辺情報から整理すると、どうやらこれはプロテインを固めて丸くしたドーナツのようなもの。米国代表コーチ曰く、「米国の秘薬」らしい。見た目的にもあまりおいしそうではなかったが、なんだか体には効きそうだ。

 ちなみに、休憩中に食べるものに関しては特に制限は設けられていない。過去には、ピザを注文してチームメートと一緒にリンクで食べた強者がいた。1980年のカナダ男子カーリング選手権大会で起きたこの珍事件は伝説として語り継がれている。

 その逸話を作った猛者の名はポール・ゴウゼル氏。カーリングの世界ジュニア大会で2度の優勝を経験したこともある同氏は、地元紙のインタビューで当時ピザを頼んだ理由をこう話している。

「昔のカーリングの試合では、準決勝の後に3位決定戦と決勝を行っていたが、3位決定戦の方が先に行われるために、次の試合までの時間が非常に短かった。大会には1000人以上の観客がいて、カファテリアは大混雑。何か食べたかったけども、すぐに試合に戻らなければいけないために並ぶこともできない」

「だからピザを頼んだんだ」

 売店で買う時間がないからといってピザを注文しちゃうなんてビックリな話だが、ピザは無事に届いて試合中にみんなで食べたそうだ。「仕方ないじゃないか、我々はお腹が減っていたんだ」と悪びれる様子もない。ちなみに、頼んだピザはトッピングが全部のっている「エキストララージサイズのデラックス、アンチョビ抜き」だったらしい。

 どうやら、特に1970年代から80年代のカーリングはかなり緩いルールの競技だったようで、72年にドイツで開催された世界大会ではなんと、あるカナダ選手がくわえタバコでプレーするという衝撃の映像も残っている。

 ピザが許されるなら、日本人選手も片手で持てる丼物なんていかがだろうか。または、水筒に味噌汁、小さなお弁当で定食も可能かもしれない。いずれにせよ、この「もぐもぐタイム」を大いに活用しての、今後の活躍に期待したい。(文・東條亜梨沙)

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