「面接時に、受験生が『卒業後、離島で働きたい』『地域に残ります』と言っても、卒業すると出身地に帰る学生が多いため、未来については聞かないことにしました。主に高校時代について質問しています」

 同アンケートは、臨床研修修了後に大学と同じ都道府県に勤務する割合も調べている。地域枠全体の入学者が68%に対し、地元出身者(大学と出身地が同じ都道府県の者)は78%に上り、地元出身者の定着率のほうが高いという結果が出た。

 この結果を受け、厚生労働省が「地域枠」の出願資格を地元出身者に限定するよう通達した。現在、都道府県知事が地元医学部に「地元出身者枠」の設置・増員を要請することを可能とする法案化も進んでいる。

「18年度入試では、17年度には出身地による制限がなかった名古屋大学後期の『緊急医師確保対策枠』、大阪市立大学の『大阪府指定医療枠』、愛知医科大学の『愛知県地域特別枠』などが、出願資格の出身高校や居住地を地元に変更しました。今後、出願資格を変更する大学は増えると思います」(メディカルラボ・可児良友本部教務統括)

 多くの都道府県が医師の定着に悩む中、島根県は特殊な取り組みをしている。島根大学の地域枠入試では、地域の医療機関や福祉施設での実習が受験資格として義務づけられているのだ。

「地域枠推薦入試」では、生まれ育った地域が島根県内のへき地等に該当し、地元に帰って医療に貢献する強い意志のある者が対象となる。出身地にある医療機関と福祉施設で実習をするとともに、各施設長の面接評価を受け、市町村長による面接も受ける必要がある。 

一方、「緊急医師確保対策枠推薦入試」は、県内の医療に貢献する強い意志がある者が対象で、出身地は問わない。島根大学が指定する県内の医療機関で実習し、担当者の評価を受ける。さらに病院長や県担当者による面接もある。

 島根大学の並河徹医学部長は、こう語る。「病院長・福祉施設長や、自治体首長による面接評価があるうえ、志願者が実習の活動記録や感想文などを書くため、地域医療に貢献する強い意志があるか、医師としての資質を備えているかを確認できます」

 地域枠の他にも、返還不要の「給付型奨学金」や学費が減免される特待生制度もある。入試や入学後にいい成績を修められるよう、努力しよう。(文/庄村敦子)

※AERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』より抜粋

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