新生クレイジー・ホースとの後半は、愛器オールド・ブラック(53年製ギブソン・レスポール・ゴールドトップを黒く塗り替えて、ビグスビーのヴィブラート・テイルピースを装着し、ピックアップなどさまざまなパーツに手を加えたもの)を豪快に響かせながら、「ダウン・バイ・ザ・リヴァー」「シナモン・ガール」「サザン・マン」などに加え、『ZUMA』から「ドント・クライ・ノー・ティアーズ」と「コルテス・ザ・キラー」も聞かせてくれた。クレイジー・ホースの演奏は、たしかに「世界一有名なガレージ・バンド」という印象だったが、ニールは、彼らと合体したときにしか生まれないケミストリーのようなものを、心から楽しんでいるようだった。
このときニール・ヤングは、まだ作品化されていなかった曲を、しかも8分を超す長い曲を僕たちに聞かせている。その後のコンサートのほとんどで取り上げ、ロック界永遠の名曲の一つとして聴き継がれていくこととなる「ライク・ア・ハリケーン」だ。前年暮れあたりからステージで演奏していたそうだが、情報が寸時に伝わることなどなかったあの時代、それは、まったく未知の曲だったといっていいだろう。ポンチョの弾くストリングスマン・シンセサイザーをバックにした表情豊かなニールのギター・ソロを、僕は、はじめて目にする日本のファンへのニールからの大切な贈り物のようにも感じたものだ。(音楽ライター・大友博)