「すごくいいところですよ、楽しいですよ」じゃなくて、つまらないところは「つまらない」、美味しくないものは「美味しくない」、おいしいものは「おいしい」って言う。震災前に第三セクターが作ったような変な施設に行ったときには、後輩と「何だよここは!」って突っ込みながら、つまらなすぎて楽しかった。
そうやっていると、素敵な温泉があることを知ったり、ラーメンがうまいことを知ったり、ラーメン屋のご主人と仲良くなったりして、自分が楽しくなっちゃってるんですよね。
相馬市の立谷秀清市長も通っているうちに知り合って、強面の自民党の親父ですけど、政治的な思想に関係なく人間として「親父と俺」みたいな関係ですね。この前も「親父さん時間ある?」って連絡して、「20分だけ大丈夫」って言ってくれたので市長室に遊びに行きました。「最近、何か変わった?」って聞くと、「こういう施設を作ったから見て帰れよ」とか「年寄りが暮らしているから挨拶して行け、喜ぶから」って教えてもらって立ち寄ったりとか。いま行政での問題点とか真面目なことを教えてもらったりしますね。
もちろん政治家だから、ちゃんと線引きはしていて、「親父さん、俺は選挙は手伝えないからね」って話したり、市長室にあったラーメンを「美味いからもらって帰れ」って言われたときも、僕が「いや、これはダメでしょう」って言うと、「お前は選挙権がないからいいんだよ」みたいなやり取りもしてました(笑)。
震災から7年たって、また今年も節目の報道がされるだろうけど、僕は「支援」とか「被災者」っていう言葉を使うのが嫌なんです。実際、現地でも「被災地、被災者って言ってくれるな」って言う人の話を何度も聞きました。「俺たちは普通だ」「支援とか、福島のためにとか、もうやめてくれ」と。その土地に住む人の気持ちもあるし、みんな同じ人間で、何も変わらないわけです。幸せなことも、汚い面もある。被災者と一括りにしちゃうと現実が見えなくなると思うんですよね。